日本のブランドをグローバルに 【マーケブログ②】世界市場から取り残されてしまった日本企業、復活のカギ

過去数十年間にわたり、日本は電子機器や自動車など複数の産業において世界的な存在感を示してきました。しかし、最近は他国の競合企業に押される傾向が見られ、とりわけマーケティングというエリアにおいて後れを取っています。

このブログでは、さまざまな産業における日本の市場シェア低下の背後にある理由を探り、競争力を回復するためにグローバルなマーケティング基準を取り入れることの重要性について論じます。

1.変化が続くデジタルマーケティング情勢

2010年代初頭から半ばにかけて、デジタルマーケティングの状況は大きく変化しました。デジタルマーケティングの登場、ウェブデザイン基準の進化、ソーシャルメディアの重要性の高まりは、企業が顧客と関わり、ブランドをアピールする新たな機会を提供しました。ドイツ、韓国、中国などの競合他社がこうした新しいマーケティング戦略を急速に取り入れる中、日本企業の一部は後れを取り、その過程で市場シェアを失いました。 

ノキア、ヤフー、トイザらスなどの事例は、変化するマーケティング環境に適応できない企業への警鐘となるものです。携帯電話業界のリーダーであったノキアは、デジタルマーケティングやソーシャルメディアの導入に苦慮し、アップルやサムスンといった競合他社が優位に立ったため、市場シェアが急落しました。同様に、ヤフーもデジタルマーケティングの進歩や製品革新に対応できず、検索エンジン市場での優位性をグーグルに奪われました。トイザらスはデジタル時代に大きな困難に直面し、Eコマースへのシフトとデジタルマーケティングの重要性の高まりについていけず、最終的に倒産に至りました。

2.日本企業の世界市場でのシェア低減

日本の世界市場シェアは、2015年以降、複数の産業で低下しています。家電市場では、日本企業はサムスンやファーウェイのような韓国や中国の競合他社に差をつけられています。データによると、家電における日本の世界市場シェアは、2015年の19.5%から2021年には12.7%に低下しています。

テレビの市場シェアも韓国や中国に有利にシフトしており、日本のシェアは2015年の45.2%から2021年には32.6%に減少しています。自動車産業では、他国との競争激化により日本のシェアが低下し、特に電気自動車(EV)分野では2015年の36.4%から2021年には30.9%に低下しています。


3.2015年前後の世界のトレンドが日本企業の市場シェア低下に与えた影響

2015年前後の世界的な出来事やトレンドが、様々な産業における日本の市場シェアに変化をもたらした可能性があります。単一の事象や要因を唯一の原因として特定することは困難ですが、以下に影響を与えたと思われる関連の動きをいくつか取り上げています。


●デジタルマーケティングの登場: 2010年代前半から半ばにかけて、デジタルマーケティングが大幅に増加し、広告や消費者参加にオンラインチャネルが採用されました。日本には強力な技術インフラがあるものの、一部の日本企業はこうした新しいマーケティング機会への適応が遅れ、他国の競合他社に優位性を与えてしまいました。

●ウェブデザインの規格の進化:同時期に、さまざまなプラットフォームで、モバイルファーストのウェブデザイン、レスポンシブデザイン、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上への移行が進みました。これらの新しいデザイン基準をいち早く取り入れた企業は、顧客の獲得と維持において競争優位に立つことができました。これらのトレンドを取り入れるのが遅れた日本企業は、結果として市場シェアを失った可能性があります。

●ソーシャルメディアの重要性の高まり:Facebook、Twitter(現X)、Instagram、LinkedInなどのソーシャルメディアは、2010年代前半から半ばにかけて大きく普及し、企業が顧客と関わり、ブランドをアピールするための重要なツールとなりました。これらのプラットフォームをより効果的に活用した海外の競合他社は、対応が遅れた日本企業に対して優位に立ちました。


これらのトレンドは、この時期のマーケティングとウェブデザインの急速な進化を浮き彫りにしており、こうした変化への対応が遅れたことにより、日本企業が不利な立場に置かれました。グローバル市場で競争力を維持するためには、日本の企業が最新のマーケティングトレンドやテクノロジーを受け入れて適応することが極めて重要です。そうすることで、市場シェアを回復し、各々の業界で主要なプレイヤーであり続けることができるのです。

4.日本のウェブデザイン: 世界市場ではガラパゴス(世界には珍しいスタイリング)

日本のウェブサイトは、欧米のウェブサイトと比較して、デザインスタイルやクオリティの面で異質な存在と考えられてきました。日本のウェブデザインにはいくつかの特異な要因があり、それが時としてグローバルなアピールやアクセシビリティの妨げになることがあります。


●情報密度の高さ:日本のウェブサイトは、1ページに大量のテキストと画像を掲載する、密度の高いレイアウトが特徴です。これは、日本語のコンパクトで効率的な文字体系が、より多くの情報をより小さなスペースで表現することを可能にしているためと思われます。しかし、欧米のミニマルなデザインに慣れたユーザーにとっては、情報密度の高さに圧倒され、すぐに離脱してしまうことが、多々あります。

●デザインの美学:日本のウェブデザインには、鮮やかな色使いや複雑な模様、細かなイラストなど、日本の伝統的な美学が取り入れられていることが多々あります。これらの要素は日本人の視覚には魅力的ですが、他の地域で人気のある、よりシンプルでクリーンなデザインのトレンドとは一致しないことがあります。日本のウェブサイトが持つ独特のデザイン美は、海外のユーザーにとって文化的な違和感を与える可能性があります。

●レスポンシブ・デザインの使用が限定的: レスポンシブ・デザインは、異なる画面サイズやデバイス(パソコンやスマートフォン)にウェブサイトのページ・レイアウトを自動的に適応させるもので、現代のウェブデザインに不可欠な要素となっています。しかし、日本の多くのウェブサイトではレスポンシブ・デザインの導入が遅れており、特にモバイルデバイスでのユーザー体験に悪影響を及ぼしています。このようなレスポンシブ・デザインの欠如は、日本のウェブサイトのグローバルなアクセシビリティとアピールを阻害します。

●文化的背景:日本のウェブデザインは、アニメや漫画など日本のポップカルチャーを取り入れた、その国の文化的背景に深く根ざしたものであることが多々あります。これらの要素は、日本のユーザーには共感されるかもしれませんが、海外の大多数のユーザーには理解されにくく、評価されません。このような文化的特異性は、日本のウェブサイトが世界のウェブデザインの中で異質な存在であると認識される一因となりかねません。

●言葉の壁:日本のウェブサイトには英語翻訳があるものもありますが、その多くは日本語を話すユーザーを主な対象としています。このような言語の壁は、日本のウェブサイトのグローバルな魅力やアクセシビリティを制限しています。


ウェブデザインは、日本のビジネスが遅れをとっていると言われるいくつかの分野のひとつに過ぎません。これらの要素は、日本のオーディエンスには魅力的かもしれませんが、グローバルなアクセシビリティや訴求力の点では課題となります。グローバルな競争に勝ち抜き、オンラインでの存在感を高めるために、日本企業はウェブデザインのアプローチを改善し、国際的なデザイン基準やユーザーの期待に応える必要があります。

5.遅れをとることの代償

今日の速いペースで進化し続けるグローバル市場において、優れたマーケティングに遅れをとることは、企業にとって重大な結果をもたらします。新しいマーケティングトレンドや戦略に適応できなかった場合のコストは、有形無形のものであり、企業の収益やブランドの評判に影響を与えます。


●市場シェアの低下:先に述べたように、他国の競合他社が急速に新しいマーケティング戦略や技術を導入する中、それに追いつけない企業は市場シェアを低下させます。その結果、売上高や利益率が低下し、最終的には財務体質の悪化につながる可能性があります。

●ブランド評価へのダメージ:デジタル時代において、企業のオンラインプレゼンスとマーケティング活動は、そのブランド評価を形成する上で重要な役割を担っています。優れたマーケティングに遅れをとると、ブランドの認知度や顧客エンゲージメントが低下し、企業の製品やサービスが否定的に受け止められることになります。ブランド評価の低下は、修復が困難でコストがかかり、場合によっては企業の存亡に関わることもあります。

●機会損失:新しいマーケティング戦略やプラットフォームを取り入れないことで、新規顧客開拓や市場プレゼンス拡大の機会を逃すリスクがあります。より早く適応した競合他社がこれらの機会を獲得し、遅れている企業との差をさらに広げてしまうかもしれません。

●競合他社に対する脆弱性の増大:競合他社は、より優れた製品やサービス、より効果的なマーケティングキャンペーン、優れた顧客体験などを提供することで、自社の弱みに付け込む可能性があります。

●人材プールの減少:マーケティング担当者が最新のトレンドやテクノロジーを常に把握することの重要性を認識するようになる中、マーケティングの卓越性を優先できない企業は、優秀な人材の獲得や維持ができなくなります。その結果、企業のマーケティング能力がさらに低下し、競争上の不利が深刻化しかねません。

●キャッチアップのための高いコスト:マーケティングに遅れをとると、最終的には競合他社に追いつくために多額の投資を余儀なくされることがあります。この場合、新しい人材の採用、新技術への投資、マーケティング戦略の見直しなど、多大なコストがかかります。このようなコストは、企業の財務資源をさらに圧迫し、ビジネスの他の重要な領域から注意を逸らす恐れがあります。


グローバルマーケティングに遅れをとると、市場シェア、ブランド評価、成長機会、長期的な競争力などに影響を及ぼし、企業にとって深刻な結果をもたらします。このようなリスクを回避し、グローバル市場での地位を維持するために、日本企業はマーケティングのトレンドを把握することの重要性を認識し、マーケティング能力への投資を継続的に行う必要があります。

6.パスフォワードの成功事例

日本企業が競争力を取り戻すためには、デジタルマーケティング、ソーシャルメディア、コンテンツマーケティングなど、最新のマーケティング戦略を取り入れる必要があります。これらのプラットフォームを効果的に活用することで、より多くの人々にリーチし、顧客との関係を深め、ブランドをより効果的にアピールすることができます。日本企業が市場シェアを回復し、各業界のグローバルリーダーとしての地位を確立するためには、優れたグローバルマーケティングを取り入れることが重要です。


デジタルマーケティングを成功させた日本企業の例として、ソニーとトヨタが挙げられます。ソニーは、高品質な製品にこだわり、ソーシャルメディアやコンテンツマーケティングなどのデジタルマーケティングチャネルを効果的に活用することで、ブランドイメージを活性化させました。その結果、ソニーの「プレイステーション」ブランドは、世界的に強い存在感を示し、ゲーム業界のマーケットリーダーであり続けています。

一方、トヨタは、ハイブリッド車と電気自動車のラインナップを促進するためにデジタルマーケティングを導入し、グローバル市場での地位を強化することに成功しました。ソーシャルメディア、コンテンツマーケティング、インフルエンサーとのパートナーシップを活用することで、トヨタは顧客と関わり、環境に優しい車を効果的に宣伝し、市場全体のシェア拡大に寄与しています。


これらの成功例は、日本企業がデジタルマーケティングの環境に適応し、競争力を取り戻すことができることを実証しています。これらの事例から学び、最新のマーケティング戦略を取り入れることで、他の日本企業も世界シェアの減少傾向を逆転させ、世界市場での優位性を再確立することができるのです。

まとめ

日本は、変化するデジタルマーケティング環境に適応するのに苦労しており、様々な産業における市場シェアの低下を招いています。グローバルマーケティングの重要性を認識し、最新のマーケティング戦略を取り入れることで、日本企業はこの傾向を逆転させ、各業界におけるグローバルリーダーとしての地位を再び確立することができます。遅れをとることの代償が大きくなりつつある今こそ、行動を起こすべき時なのです。ソニーやトヨタのような成功例を見れば、日本企業がマーケットシェアを回復し、世界市場でグローバルな強者としての地位を維持するための明確な道筋が見えてきます。


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※海外進出の成功と失敗の分かれ目




プロフィール

日本のブランドをグローバルに REMARK株式会社

REMARKは、日本の代理店の強みと、海外の代理店の強みを両方兼ね備えた会社です。
世界中で経験を積んだマーケティングのスペシャリストである外国人中心で、東京、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、ドイツなどの各拠点にいます。
中心メンバーは日本に住み、日本のビジネス文化を理解しながら、外国人目線でのコミュニケーションをダイレクトに届けることができることが強みです。
日本の良いものをもっと世界に広げたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

一般的なマーケティングコンサルティングに加え、下記のようなことが得意です。
・デジタルマーケティングが生まれた国、アメリカから最先端情報をアップデートしつつ貴社向けに最適化した活用方法をご提案
・日本企業の持つポテンシャルの再発見とトランスクリエーション

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・日本国内だけでは売上が頭打ちだと感じている経営者の方
・英語圏の市場に進出したものの、いまひとつ期待した成果が出ていないと感じる方
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