多田智子の働き方改革関連コラム 介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援策が強化されます

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今回は、育児・介護休業法の改正についてお知らせします。


育児や介護と仕事の両立を支援する育児・介護休業法の改正案が3月12日国会に提出されました。改正案では、男女ともに育児や介護の事情があっても仕事と両立しやすくする為、現行制度の拡充や見直しの内容が盛り込まれていますが、今回はその中でも特に介護に関わる改正について解説します。


介護離職者は年間約10万人といわれていますが、団塊ジュニアと呼ばれる世代が50歳前後になり、組織の管理職や経営層など中核人材を担っている中で、介護に関わる制度の認知や理解が進まず、支援策を知らずに離職に至ることは、事業継続や組織運営の観点からも大きなリスクとなり得ますので、企業としても来年の改正法施行を見据えて対応していくことが必要です。


介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度強化策(施行予定:2025年4月)

仕事と介護の両立をめぐっては、支援制度を利用しないまま離職に至るケースが多いことから、今回国会に提出された育児・介護休業法の改正案では、以下のような取り組みを事業主に義務付けるとしています。

労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行う

労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)

介護休暇について、勤続6ヶ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みの廃止

家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する


家族の介護は誰にでも起こりうる上、育児とは異なり、ある日突然その必要が生じることがあります。「いつかは自分も」と、なんとなく思ってはいても実際介護に直面したときに、何をすればいいか、どこに相談すればいいか正確に知っている方はどのくらいいるでしょうか。今後は、実際に介護に直面する前の早い段階、例えば40歳など、一定年齢に達した従業員を対象として研修を実施し、両立支援制度に関する情報提供を行ったり、相談窓口の設置や周知等の職場環境を整備することが求められます。家族介護は従業員が自ら申し出てくれなければ介護に従事していることが顕在化しにくく、企業が実態を把握しづらいという性質もあります。まずは経営者からメッセージを発信し、両立支援制度の認知度を高めると共に、介護の必要が生じた従業員が声を上げやすい組織風土の醸成、環境整備が重要です。


〇経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の公表

3月26日には経済産業省からもガイドラインが公表されました。仕事をしながら家族等の介護に従事する人を「ビジネスケアラー」と称していますが、2025年には家族介護者が795万人、内ビジネスケアラーは307万人、2030年では家族介護者833万人に対し、約4割の318万人がビジネスケアラーになると予測しており、経済損失額は約9兆円と試算されています。今後、少子高齢化がさらに深刻化し、労働力人口不足が確実とされている中、仕事と介護の両立が困難となることに起因する経済活動の停滞は社会全体で取り組まなければならない課題といえます。今回の育児・介護休業法改正で強化される両立支援策の実施は、以下のようなステップを参考に、企業経営の観点からも積極的に取り組むことが期待されています。


※出典 経済産業省 仕事と介護の​両立支援に関する経営者向けガイドライン


※関連リンク

○ 厚生労働省 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案の概要」

〇 経済産業省 「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します


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多田国際コンサルティンググループ 代表社会保険労務士 多田智子

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