Netpress 第2372号 税務調査は突然来る! 調査の流れは?注意点、対応方法は?
1.コロナの影響により自粛されていたことの反動もあって、税務調査の件数が増えています。
2.最近の税務調査の状況を確認したうえで、企業側の注意点、対応方法などについて解説します。
税理士法人日野総研
代表社員・税理士 高井 大輔
1.最近の税務調査って増えている?
結論から言うと、最近の税務調査の件数は増えています。これは当然のことですが、コロナの影響により調査が自粛されていたこともあり、その反動もあって増えています。
どのくらい増えているのかというと、昨年11月に国税庁から公表された令和4事務年度の調査事績を見てみましょう。ちなみに令和4事務年度とは、令和4年7月~令和5年6月を指します。
【令和4事務年度の法人税・消費税の実地調査の状況】 |
事務年度等 | 令和3事務年度 | 令和4事務年度 | 前年対比 |
実地調査件数 | 4万1千件 | 6万2千件 | 152.3% |
申告漏れ所得金額 | 6,028億円 | 7,801億円 | 129.4% |
追徴税額 | 2,307億円 | 3,225億円 | 139.8% |
調査1件当たりの 追徴税額 | 5,701千円 | 5,241千円 | 91.9% |
(国税庁『令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要』をもとに作成) |
法人税・消費税の実地調査件数は6万2千件で前年比1.5倍、その調査によって指摘された申告漏れの所得金額は7,801億円で同1.3倍、追徴税額は3,225億円で同1.4倍、調査1件当たりの追徴税額は5,241千円で前年より8%ほど減っています。
1件当たりの追徴税額は若干減ったとはいえ、追徴税額の総額は近年では最高値だったとのことです。
この公表資料では、大口・悪質な調査必要度の高い法人を中心に実地調査が行われたとありますが、1件当たりの追徴が5,241千円という金額は必ずしも大口案件のみではないように思います。
また、実地調査のほかに「簡易な接触」とありますが、これは明らかな書面の誤り等を電話等で指摘して修正してもらうといったものになります。
2.調査ってどういう時に来て、何に気を付けたらいいの?
税務調査対応で大切なことは、実際に調査になってしまった段階で対策できることはないということです。
こう言ってしまうと元も子もない感じがしますが、基本的にはないということであり、むしろそこで何か取り繕ってしまうと、重加算税の対象となる「仮装・隠ぺい行為」になりかねないということです。
言わずもがなですが、税務調査官にとって重加算税案件は追徴税額の多寡とはまた違った意味合いがありますので、調査に対する意気込みが変わってきます。
つまり、税務調査対応としては、日々の積み重ねのなかで指摘事項をなくすこと、指摘されない体制にするということが一番の対策だということです。
それでは、具体的な調査でよく見られる項目を確認していきましょう。
調査対象にはどのような法人が選ばれるのかというと、一般的には急激に売上や粗利益率が上がった会社、繰越欠損金を使い切り黒字になった会社、税理士が変わった会社などです。また、大きな追徴があった会社の取引先への反面調査もありますし、過去の税務調査により重加算案件や追徴課税が生じている会社なども調査対象に選ばれやすいといえます。一方で、10年も20年も税務調査が来ていない会社もあります。
税務調査ではどのような点が見られるのかというと、期ズレ・経費性・実在性などがよく見られます。
期ズレとは、読んで字のごとく、決算をまたいでの売上計上モレ、外注・仕入などの先入れ、棚卸の計上モレなどをいいます。これらは請求書日付だけでなく、納品書や現場状況などを確認して期間帰属が正しいか、場合によっては相手方を反面調査して確認します。
経費性とは、その支出が本当に事業遂行上必要なものなのかということです。具体的には、交際費のなかの食事の相手や贈答品を送った相手、消耗品などで処理された物品などです。事業に直接関係ないものや個人の利益に該当するものなどは、交際費で損金不算入となって法人税が生じたり、役員や従業員の給与として源泉所得税が生じたりします。
役員個人の利益に該当して役員賞与となると、役員賞与は損金不算入ですから、その分法人税を払いながら、役員本人の源泉所得税も生じることになり、よくダブルパンチなどと表現されます。
実在性とは、人件費や外注費などその支払先の者が本当にいるのか、取引自体が本当にあるのかということです。社内の者に関しては、給与台帳や履歴書、組織図などを確認します。外注先などは、住所・氏名はもちろんのこと、その者がきちんと確定申告をしているかといったことも確認されます。架空外注や架空仕入れなどは横領案件にもつながりやすいので注意が必要です。
ちなみに横領となった場合、通常会社は被害者ですが、横領した者が経営に近い場合には法人が自らやったものとみなされて重加算税の対象になることもあります。
架空のものは損金不算入となり、横領者に返してもらうものとして求償権が生じますが、求償権はそれが回収できないと確定するまでは損金算入することができません。
3.最後に
税務調査対策は、日々の積み重ねだと申し上げましたが、税務調査において否認されないためには、形式と実質の伴った証拠の保存が大切になります。
つまりは、作成した帳簿書類、請求書・領収書などの証拠資料の保存はもちろんのこと、
・ | 会社において明確な規定が存在する、明文化された契約が存在する |
・ | 経済合理性のある意思・判断に基づく決定であり、稟議書等正規の意思決定手続を経ている |
・ | 一般に公正妥当なものであり、社会通念に照らして相当な金額を逸脱していない |
など、一定の検討がしっかり行われ、それがルール等に沿った妥当なものであるという判断・根拠部分からしっかり保存することが大切になります。
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