Netpress 第2370号 事前の確認・準備が重要 電子帳簿保存法に対応したシステム導入の進め方

Point
1.2024年1月から適用された改正電子帳簿保存法に対応するシステムを導入する企業が増加しています。
2.電子帳簿保存法に対応したシステム導入のメリット・デメリット、実際の導入の進め方について解説します。


税理士・中小企業診断士
服部 大


1.システム導入のメリット・デメリット

電子帳簿保存法は、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの制度に分類されます。


経理業務について、紙ベースによる業務体制から脱却し、データ保存に移行する場合には、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があるため、専用のシステムを導入するケースが一般的です。


電子帳簿保存法に対応したシステムは、そのメリット・デメリットを正しく理解したうえで、導入すべきか否かを検討・判断するようにしましょう。


(1)システム導入のメリット

電子帳簿保存法に対応したシステムを導入し、帳簿や書類のデータ保存を行う場合には、次のようなメリットが期待されます。


①保管スペースや印刷コストの削減

事業規模や取引数に比例して、帳簿や証憑書類の枚数も増える傾向にあります。これらの書類は一定期間にわたって保管する必要があるため、紙媒体の場合は十分な保管スペースを確保しなければなりません。


システムを導入し、データ保存に移行した場合には、物理的な保管スペースが不要となることに加え、用紙代などの印刷コストの節約にもつながります。


②業務効率化やリモートワークの実現

データ保存に移行することで、ファイリング作業などの負担軽減だけでなく、検索性に優れていることから、資料を探す時間が短縮されるなど、業務の効率化にも役立ちます。


また、業務に必要な資料をシステム上で共有できるため、自宅等でリモートワークを行う場合でも、スムーズに業務を進めることが可能です。


③リスク軽減や不正防止

紙媒体からデータ保存に移行することで、書類の紛失リスクの軽減、改ざんなどによる不正防止にも役立ちます。


また、データ保存を行う場合、電子帳簿保存法では、タイムスタンプの付与機能や、訂正・削除の履歴の確認機能等が求められています。


そのため、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することで、社内のリスクマネジメントが促進され、内部統制の強化につながるでしょう。


(2)システム導入のデメリット

電子帳簿保存法に対応したシステムを導入し、データ保存を行う場合には、いくつか注意点があります。次のデメリットについても押さえておきましょう。


①導入コストの負担増

新たに社内システムを導入する場合には、システムの購入費や設定費用など、初期投資としてまとまったコストが発生するのが一般的です。


クラウドサービスなどを導入する場合、初期費用だけでなく、ランニングコストとして毎月の利用料が発生する場合もあります。システムごとに料金体系も異なるため、自社の予算感や資金繰りに適したものを導入しましょう。


②教育にかかるコストや時間

電子帳簿保存法対応に限らず、新たなシステムを導入する際には、抵抗感を示す社員も少なくありません。


また、社員間では予備知識やノウハウなどにも個人差があることから、社内教育などが不十分な場合には、新システムへの適応に時間がかかるなど、導入の効果が思うように発揮されないケースもあります。


③システム障害やセキュリティ面のリスク

書面に比べて紛失リスクを軽減できる一方、データ保存の場合には、システム障害やデータの破損リスクがあります。


また、サイバー攻撃のリスクもあるため、データのバックアップや分散管理などのセキュリティ対策が必要不可欠です。

2.システム選定・導入のポイント

電子帳簿保存法に対応したシステムの選定や導入にあたっては、次の4つのステップを意識することで、データ保存へのスムーズな移行を実現しやすくなるでしょう。


(1)対応する制度の検討

電子帳簿保存法には、前述の通り「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」という3つの制度があり、それぞれの制度ごとに対象となる帳簿・書類や求められる要件が異なります。


したがって、電子帳簿保存法に則ってシステムを導入する場合には、まずは「どの制度に対応すべきか」を明確にすることから始めましょう。


(2)システムの選定

対応すべき制度や要件を確認したら、必要な機能を有するシステムをピックアップして、比較・検討を行います。


システムを検討する際には、機能や使用感、料金体系に加えて、セキュリティ対策やサポート体制についても必ず確認しましょう。


また、システム選定においては、意思決定権をもつ経営陣や上長だけでなく、実際にシステムを利用する営業社員や経理担当者にもヒアリングを行い、現場目線での意見も収集することをおすすめします。


(3)導入計画の立案

導入するシステムが決まったら、具体的な導入計画を立てましょう。導入スケジュールの策定や責任者、プロジェクトメンバーの選定など、スムーズな導入に向けた準備を整えます。


また、システム導入の効果を高めるためには、既存の業務フローの見直しも欠かせません。紙ベースからデータ管理に移行することで、社内での管理体制や承認プロセスの変更が必要になるケースも多くなります。


既存の業務フローに当てはめるのではなく、システム導入後における最適な業務体制を改めて構築しましょう。


(4)導入後のフォロー

システムの導入後においては、継続的なフォローを行います。当初の期待どおりにシステムが稼働しているか、慎重にモニタリングする必要があります。


また、社内での運用方法や管理体制にバラツキが生じないよう、定期的に社内研修や意見交換を行うなど、丁寧なフォローアップやサポート体制の強化に努めましょう。



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