Netpress 第2092号 改正高年齢者雇用安定法が施行! 70歳までの就業確保措置が努力義務になりました

Point
1.2021年4月から、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高年齢者就業確保措置として、次の①から⑤のいずれかの措置を講じることが努力義務となりました。
①70歳までの定年引き上げ、②定年の廃止、③70歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長)の導入、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に事業主等が実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入
2.雇用契約によらない上記④⑤の措置(創業支援等措置)のみを講じる場合は、労働者として保護されないため過半数労働組合等の同意が必要になります。


社会保険労務士法人トムズコンサルタント
特定社会保険労務士 小宮 弘子


1.高年齢者の就業確保措置

少子高齢化が急速に進行し、総人口および労働力人口が減少するなかで、経済活動の活力を維持するためには、働く意欲のある誰もが年齢に関係なく能力が発揮できる環境を整備する必要があります。


これまで、事業主に対して65歳までの雇用確保が義務化されていましたが、2021年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳までの就業機会(雇用措置・雇用以外の措置)を確保することが努力義務とされました。



(1)対象となる事業主

就業確保措置の努力義務を負う事業主は、①定年を65歳以上70歳未満としている事業主、②65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引続き雇用する制度を除く)を導入している事業主となります。


(2)努力義務への対応

原則、定年まで雇用していた事業主に努力義務が課せられますが、特殊関係事業主が就業確保措置を講じることも可能とされています。また、講じる措置は一つに限らず、複数の措置を講じることも可能です。


(3)就業確保措置の対象者基準

就業確保措置は努力義務のため、定年の延長・廃止を除いて、対象者を限定する基準を設けることができます。なお、対象者の基準を設ける場合は、65歳までの労使協定基準と同じように、高年齢者を恣意的に排除するような基準(会社が必要と認めた者、性別等)は認められず、具体性・客観性のある基準とし、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされていることに留意する必要があります。


(4)70歳までの継続雇用制度を導入する際の留意点

①自社以外で継続雇用する場合/企業間の契約が必要

特殊関係事業主または他社で継続雇用する場合は、特殊関係事業主等が高年齢者を継続雇用することを約束する契約を締結する必要があります。この契約は、書面により締結することが望ましいとされています。


②特殊関係事業主以外の他社で継続雇用する場合/無期転換ルールの特例対象にならない

無期転換ルールの特例は、都道府県労働局の認定を受けた自社(特殊関係事業主を含みます)の下で、定年後引き続き雇用された期間について、無期転換の権利が発生しないとするものです。他社で定年を迎えた人を継続雇用する場合は特例の対象にはならず、有期契約期間が通算5年を超える場合は無期転換の申込権が発生します。

2.創業支援等措置を導入する際の留意点

(1)導入手続/①~③のほか、就業先となる団体との契約、個々の高年齢者との委託契約の締結も必要

①計画の作成

業務内容、支払う金銭、契約頻度、納品、安全・衛生に関する事項等、法定の記載事項が定められています。


②計画について過半数労働組合等の同意を得る

同意を得る際は、労働者として保護されない働き方であること、そのため上記①の計画を定めていること、創業支援等措置を選択する理由について説明します。雇用による措置を併せて講じる場合は、これにより努力義務を果たしたことになるため、必ずしも同意を得る必要はないものの、同意を得ることが望ましいとされています。


③計画の周知

②の同意を得た計画を、社内イントラネット等で常時閲覧できる状態にする等、周知する必要があります。


(2)労働者性が認められないこと

創業支援等措置は雇用によらない措置のため、労働者性が認められるような働き方にならないよう留意します。

3.その他の留意点

継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合において、65歳までの継続雇用制度と同様に、就業規則や実施計画に次の事項等を記載した場合は、契約を継続しないことが認められます。なお、契約を継続しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められる点に留意します。


・心身の故障のため業務に堪えられないと認められること
・勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員(契約履行者)としての職責(義務)を果たし得ないこと 等


また、措置を講じていない場合の行政対応について、厚生労働省の「高年齢者雇用安定法Q&A」によれば、制度内容を把握していない・検討を開始していない事業主に対して、啓発・指導を行うとされています。少なくとも就業確保措置の内容を把握し、自社の事業環境や雇用状況等を踏まえ検討を開始するようにしましょう。



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