Netpress 第2066号 適切な労務管理のために テレワーク時の部下マネジメント ここが急所です!
1.テレワークの普及により、従来のマネジメントとの違いに戸惑う管理職・上司は少なくありません。
2.どのような点に注意して、テレワーク下の部下と接し、管理していけばよいのかについて解説します。
1.テレワークにおけるマネジメントの課題
新型コロナウイルス感染症の影響により「出社をしない働き方」であるテレワークが増えましたが、テレワークになってから、「労働実態が把握しにくい」「コミュニケーションがとりにくい」「生産性が低下している可能性がある」など、マネジメントが大変になったという声が多く聞かれます。
テレワーク時には、出社時とは異なるマネジメント手法が必要となってきます。テレワークであることを活かして、相手に文章で情報や要望をわかりやすく伝える技術を磨いたり、仕事の進捗を部下が自己管理できるようにしたりする、といったマネジメントも行うべきでしょう。
また、テレワーク社員と出社しなければならない社員との不公平感を解消するために、出社する社員に対しても、いままで以上の配慮が必要となります。
2.意識的なコミュニケーションが重要
出社時には、自然と挨拶を交わしたり、周囲の会話が聞こえたりすることで、特に意識をしなくても社員同士のつながりは生じるものです。しかし、テレワークでは、このような状況がありません。
社員のモチベーションを低下させないためにも、出社時に近い環境を用意するか、逆にテレワークであることを意識し、出社時よりも快適な状況をつくり出す必要があります。
すでにオンラインのチャットツール等を導入している会社も多いと思われますが、社員のオンラインツールの習熟度に差があれば、カバーしておきましょう。ツールさえ導入すれば、社員は使ってくれるという意識ではなく、ツールをどのように使えばよいかといったやり取りをすれば、つながりを深める効果も期待できます。
ただし、文章による会話は、表情や声がない分、感情が伝わりにくく、素っ気ない文章は、本人の意識とは関係なく、突き放した印象を与えてしまうこともあるので注意が必要です。
新卒社員などには、必要に応じてメンターやバディ制度を設けて、精神的なバックアップができる環境を用意します。こうした制度は実際に機能しなければ意味がないので、定期的に相談する場を設けるなどしましょう。
また、社員同士が直接顔をあわせる機会もつくり、会社とのつながりを再認識し、テレワーク時の孤独感を少なくできるようにすることも大切です。
3.出社時と同じように進捗管理できる環境を整える
テレワーク時でも、出社時と同じように進捗管理ができる環境を整えましょう。
ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議システム、SlackやChatworkなどのビジネスチャット、Google ドライブやDropboxなどのファイル共有システムを活用すれば、タイムリーな進捗管理ができるようになります。
最初に、応答する時間帯や頻度など、コミュニケーションのルールを決めておきましょう。そのうえで、スケジューラーや管理ツールも使って、仕事の進捗を可視化できるようにします。
また、ミーティング前には資料や議題を事前に共有しておき、ミーティング中は相手との対話に集中できるようにしておきましょう。
4.テレワーク時の過重労働を防止する
テレワーク時も、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。なかでも、もっとも注意しなければならないのは、労働時間の管理です。
テレワークに移行してから、労働時間を上手く管理できずに、長時間労働に陥っているケースも少なくありません。これでは、生産性向上どころか、メンタル不全になりかねません。
厚生労働省では、長時間労働を防ぐために、以下の4つの方法をガイドラインで示しています。
①メール送付の抑制
②システムへのアクセス制限
③テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
④長時間労働等を行う労働者への注意喚起
テレワークでは、出社・退社がない分、時間に対してメリハリがなくなりがちなので、「始業・終業時刻の管理」と「業務時間中の在籍確認」を注意して行う必要があります。
クラウド勤怠システムを利用している場合、業務開始・業務終了時の打刻だけでなく、メールやチャットによる始業・終業の連絡も求めて、労働時間を意識してもらいましょう。時間外労働や深夜労働、休日労働は申請制にして、部下の労働時間が増えていないか、上司は注意を払う必要があります。
また、テレワーク時には、仕事中の「中抜け」もあるので、適切に管理しましょう。会社によっては、中抜け時間に
時間単位年休の取得を認める、私用外出として休憩時間とは別に管理する、などしています。
どういう管理が自社にマッチしているか検討し、テレワークに対応した労働時間管理の方法を設けてください。
■「中抜け」時間の取り扱いの例
5.安全配慮義務を意識した執務環境
テレワーク時の労務管理で見落としがちなのが、執務環境です。
通常、在宅勤務で整備すべきものは、パソコンや電話のほかに、専用の机、椅子、照明や空調設備です。
執務に適した机や椅子が揃っていないために、作業がしにくかったり、照度が十分ではなかったりする、という問題があります。自宅の執務環境を整備するための一時金を支給する会社は、まだ少数でしょう。しかし、部下がどのような環境でテレワークをしているのかなどについて、コミュニケーションの一環として確認し、環境によっては会社としてカバーすることも考えてみるとよいでしょう。
もちろん、在宅勤務は働く場所が従業員の自宅であるため、プライバシーに配慮することも忘れてはなりません。
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