Netpress 第2030号 まずはルールの整備を 職場にはびこる「リモートハラスメント」に注意!

Point
1.リモートワークにはさまざまなメリットがありますが、働き方やコミュニケーションのルールなどが整備されていないと、上司も部下も混乱して、トラブルが生じる可能性が高まります。
2.ここでは、リモートワークならではのハラスメントについて、その発生の要因と防止策を考えます。


キャリアコンサルタント 倉本 祐子

1.リモートワークをめぐる最新事情

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、多くの企業でリモートワーク(オフィスとは異なる場所で働くこと)を余儀なくされています。

それに伴って、「リモートワーク中の上司の監視が度を過ぎているように思う」「部屋の中をなめられるように見られた」など、以前にはなかった、リモートワークゆえのコミュニケーションの行き違いや労務管理上のトラブルも増えているようです。

筆者が代表を務めるダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社が、ことし5月に行ったインターネットによるアンケート調査(テレワーク業務に従事する会社員110名が対象)があります。

それによると、在宅でのテレワークに関して、上司とのコミュニケーションでストレスを感じたことが「何度もある」が41.8%、「ある」が37.2%という結果で、上司とのコミュニケーションに何らかのストレスや不快を感じている割合は、約8割にも上りました(右参照)。

コミュニケーション上のストレスですから、ハラスメントとまではいえませんが、明らかに上司とのコミュニケーションがうまくとれていない様子が伺えます。



2.「リモートハラスメント」とは

「リモートハラスメント:リモハラ」(テレワークハラスメント:テレハラともいいます)は、リモート上で起こるハラスメントのことを指し、パワハラに分類されるものと、セクハラに分類されるものがあります。

(1) パワハラに分類されるもの

ことし6月に施行された「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」により、企業には職場におけるパワハラを防止する措置が義務づけられました(中小企業は2022年4月から義務化)。

職場におけるパワハラとは、次頁に示した3つの要素のすべてを満たすものをいいます。


①職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景として行われること

②業務上、必要かつ相当な範囲を超えて行われること

③労働者の就業環境が害されるものであること


「職場」とは、「労働者が働く場所」を指します。労働者が通常就業している場所に限られませんから、自宅で働いているのであれば、その自宅が職場となります。

リモートワークの環境においては、えてしてパワハラがエスカレートしがちです。その理由としては、通常のオフィスのように他の人の目がないことや、チャットやメールの使用が増えることで、言葉がより陰湿になりやすいことなどが挙げられます。

(2) セクハラに分類されるもの

セクハラとは、職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われることにより、次のような不利益や悪影響が生じることをいいます。


①性的な言動を拒否するなどの労働者の対応により、解雇、降格、減給などの不利益を受けること

②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること


リモートワークにおいて、たとえば「自宅の部屋を見るのは、なんだか新鮮だね」「自宅でも化粧したほうがいいよ」「後ろに飾っている写真を見せてよ」といったように、職場(仕事中)としては不適切な発言や、性的な要素が感じられる発言は、セクハラと捉えられても仕方がありません。

たとえば、「髪を切ったの?」と尋ねること自体は、セクハラではありません。しかし、そこからさらに「どうして髪を切ったの?」といった発言をすると、セクハラと捉えられる可能性が高くなります。

仕事には関係のないプライベートに踏み込むような言動は、控えるべきでしょう。

3.リモートハラスメントを防止するために

リモートハラスメントが生じる原因の1つとして、管理者の側が、まだリモートワークに慣れていないということが挙げられます。また、リモートワークに適した働き方が整備されていないと、上司も部下も混乱して、リモートハラスメントが生じる可能性が高まります。

そのため、まずは、リモートワークに関する運用ルールを整備することが求められます。そのうえで、上司と部下がこまめにコミュニケーションをとる(会話をする)ことが重要なポイントになります。

たとえば、リモートワークをする社員からは、「リモートワークになって1日誰とも話さなかった。このまま続けるのはつらい」「仕事の相談をしたいが、相手の状況がわからないので、抱え込んでしまいがちになる」「仕事の終わりが見えず、いつが休みでいつが平日なのか、わからなくなってきた」といった不安の声が聞こえてきます。

ほかにも、家族がいるからこその不満を聞くこともあります。「自宅に無理やり働くスペースをつくったので、家族とトラブルになった」「夫婦ともに在宅で、どちらが食事をつくるかでもめることが増えた」「家族でWi-Fiの取り合いをしている」などです。

このような体調や心理、働く環境の変化は、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。定期的な面談などを通して社員の様子を確認することは、メンタルヘルスの面からも重要です。

また、リモートワークを実施するうえでは、社員の負担に配慮し、リモートで働ける環境を整備できるように、会社として手当を支給することも検討すべきでしょう。



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