Netpress 第2001号 これだけは知っておきたい! トラブルを防ぐ「労使協定」の締結・運用ガイド
1.労使協定について、その重要性は認識しながらも、締結に際してきちんとした手続を踏んでいなかったり、形骸化したまま放置されていたりするケースが散見されます。
2.労使トラブルを防ぐためにも、労使協定の締結、運用、届出について、改めて確認しておきましょう。
1.労使協定とは
労使協定とは、会社と従業員が、その会社の労働条件について法律の例外を認める事項を確認し、その内容を書面にして締結することをいいます。
労働基準法(以下、「労基法」といいます)や関係法令では、使用者の行為についてさまざまな禁止事項を規定していますが、労使協定の範囲内であれば、法律違反にならないという効果を発生させます。
たとえば、労基法では、法定労働時間は原則として1日8時間、1週間40時間と規定し、その時間を超える労働を禁止しています。この規定を守らないと罰則がありますが、労使協定を締結して労働基準監督署に届け出ることにより、その範囲内であれば、時間外労働をさせても法律違反に問われなくなるのです。
2.労使協定の締結単位と当事者
労使協定は、使用者と、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者との間で締結します。
(1) 締結単位
労使協定は、事業場を1つの単位として締結します。労基法で「事業」とは、業として継続的に行われると認められ、主として同一の場所で行われるものを指します。
したがって、本社や本店と異なる場所に、支社や支店、営業所や工場等がある場合には、通常はそれぞれの場所が1つの事業場に当たりますので、その場所ごとに労使協定を締結する必要があります。
(2) 当事者(使用者側)
締結当事者の使用者側は、一般的には経営者(代表取締役)が該当しますが、支店等については支店長や工場長等、また本社では総務部長等が該当する場合もあります。
前述のとおり、労使協定は事業場ごとに締結しますので、使用者に当たる者はそれぞれの場所ごとに決定します。いくつかの支店等がある場合は、場所ごとの長に当たる者でも、代表取締役1人でも構いません。
(3) 当事者(従業員側)
(4) 過半数代表者の選出方法
1.投票を行い、過半数の従業員の支持を得た者を選出する
2.挙手を行い、過半数の従業員の支持を得た者を選出する
3.候補者を決めておいて、投票や挙手等によって信任を求め、過半数の支持を得た者を選出する
4.事業場の部署ごとに代表者を選出し、選出されたそれぞれの代表者の間で選出する
なお、使用者が一方的に指名する方法や、親睦会等の代表者を自動的に代表とする方法などは認められていませんので、注意が必要です。
3.締結から届出までの基本的な流れ
(1) 締結前の交渉
さまざまな労使協定がありますが、すべてについて締結する義務はなく、あくまでも必要な場合に限ります。
会社側から労使協定の締結を提案することが多いと思われますので、締結に至るまでのプロセスが重要です。労使協定案を作成して事前に従業員説明会を開き、内容を理解してもらう、あるいはイントラネット等で告知し、質問や異議がある場合はメール等で連絡してもらう、といった方法が考えられます。
できる限り従業員全員の理解を得るようにすることが、後々のトラブル回避につながります。
(2) 労使協定の締結
協定内容について理解が得られたら、労使協定書を作成し、労働基準監督署への届出が必要なものは法令様式の届出書も作成して、労働者代表の署名または記名押印を求めます。
毎年同じ内容で更新する労使協定については、有効期間が前年のままになっているケースも見受けられます。形式要件を欠いた協定は受理されないだけでなく、場合によっては行政指導の対象にもなります。
(3) 労使協定の届出
届出が義務づけられている労使協定は、各事業場を管轄する労働基準監督署に届け出ます。必ず2部(提出用と社内保管用)を作成し、労働基準監督署の受理印を押してもらいます。
(4) 労使協定の周知
労使協定を締結したら、必ず従業員に周知しなければなりません。次のような周知方法があります。
1.常時、各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
2.従業員に書面を交付する
3.磁気テープ、磁気ディスク等に記録し、かつ各作業場にその内容を確認できる機器を設置する
労使協定が周知されないと労働基準監督署の是正勧告の対象になることもありますので、注意してください。
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