Netpress 第1974号 ミス・モレを防ぐために 「ポイント還元」の経費精算、どう処理する?

1.2019年10月1日から2020年6月30日まで、キャッシュレス・消費者還元事業が実施されています。
2.この制度を利用した経費の精算につき、どのように経理処理をすればよいのかを確認します。
1.ポイント還元制度の概要
キャッシュレス・消費者還元事業は、消費税率の引き上げに伴い、需要の平準化対策等の観点も含め、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援するためのものです。
キャッシュレス手段とは、一般的な購買に繰り返し使用できる電子的決済手段のことで、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、プリペイドカードやQRコードなどが該当します。
ポイントの還元率は5%(コンビニエンスストアのようなフランチャイズ等は2%)で、中小・小規模事業者の店舗等でキャッシュレス手段を用いて支払いをした場合にポイントが付与されます。
なお、還元方法には、次のようなものがあります。
区分(方法) | 還元のしくみ |
---|---|
(1) ポイント等の付与 | ポイントまたは前払式支払手段を付与する方法です。つまり、次回以降の買い物に使えるポイントの付与や、電子マネー残高へのチャージなどで還元されます。 |
(2) 口座引き落とし額への充当 | 主にクレジットカードで採用され、毎月の利用額が口座から引き落とされる際に、ポイント相当額が口座引き落とし額より差し引かれます。 |
(3) 口座へのポイント相当額の充当 | 主にデビットカードで採用され、キャッシュレス決済利用後に、口座にポイント相当額が入金されます。 |
(4) 即時利用ポイントの充当 | 主にコンビニエンスストアで採用され、キャッシュレス手段を用いてレジで支払いをする場合に、即時にポイント相当額の金額が差し引かれて決済が行われます。 |
ポイント還元制度に対応しなければならないのは、販売者の中小・小規模事業者だけではありません。そのような事業者から商品・サービスを購入する企業でも、従業員が経費の立替払いにキャッシュレス手段を用いる場合や、従業員用のクレジットカードで物品購入をする場合には、ポイント還元を受けることがあるため、経理業務における対応が必要となります。
2.ポイント還元制度のしくみ
経理業務の対応を考えるためには、ポイント還元がどのように行われるかを理解する必要があります。
まず、制度の対象となる事業者は、キャッシュレス決済事業者(クレジットカード会社等)に登録申請をします。登録が完了すると、その店舗におけるキャッシュレス決済がポイント還元の対象となります。
消費者がポイント還元制度の対象店舗で、キャッシュレスで支払いをすると、自動的にポイント還元が行われます。ここで、ポイント還元を行うのは、購入した店舗ではなく、キャッシュレス決済事業者であることに注意してください。つまり、ポイント還元については、消費者と店舗の間には契約関係がありません。なお、キャッシュレス決済事業者は、自己の負担でポイントを付与するわけではなく、国からの補助金を原資として行います。
対象店舗は後日、キャッシュレス決済事業者から、消費者が購入した分の代金を受領します。還元されたポイントを使用して買い物をした消費者がいれば、そのポイント相当額の代金もそこに含まれます。
3.付与されたポイント等に関する経理処理
前述のように、ポイント還元の方法には、ポイント等の付与、口座引き落とし額への充当、口座へのポイント相当額の充当、即時利用ポイントの充当の4つがあります。また、企業の経理実務においては、従業員が自分のキャッシュレス手段で決済をする場合と、会社のキャッシュレス手段で決済をする場合があります。
それぞれのケースにおいて、どのような経理処理になるのかをまとめたのが下表です。
形式 | 決済者 | 経理処理 |
---|---|---|
(1) ポイント等の付与 | 従業員 | ・付与時点では経理処理は不要 ・ポイント等を利用した経費精算の場合は会社のルールに従う |
会社 | ・付与時点では基本的に経理処理は不要 ・ポイント等の利用額は値引きとせず、雑収入(不課税)に計上 | |
(2) 口座引き落とし額への充当 (3) 口座へのポイント相当額の充当 | 従業員 | ・通常どおりの経費精算を行う |
会社 | ・値引きとして経理処理せず、口座引き落とし時または口座への充当時に雑収入(不課税)として計上 | |
(4) 即時利用ポイントの充当 | 従業員 | ・会社のルールに従い、経費精算を行う |
会社 | ・値引きとして経理処理せず、ポイント還元分は雑収入(不課税)として計上 |
なお、ポイント還元における購入者側の経理処理については、企業会計上も税法上も、直接の規定がありません。したがって、ここで述べたのは、筆者が妥当と考える経理処理になります。今後、ポイント還元に関する具体的な経理処理が公表された場合には、それに従うことになります。
4.経理処理上の留意点
まず、確認が必要なのは、経費精算における会社のルールに、ポイント還元に関する事項が定められているかどうかです。従業員がキャッシュレスで支払い、経費精算をすると、金銭の負担は会社であるにもかかわらず、従業員がポイント還元の利益を享受します。そうすると、たとえば出張のように経費精算が多額になる従業員と、その他の従業員との間で不公平感が生じかねません。また、従業員がポイントを利用して経費精算をしたときにも、ルールが明確でないと余計な事務やトラブルが生じてしまいます。
次に、ポイント還元のある領収書や、ポイントを利用して決済した領収書を記帳する際にも注意が必要です。キャッシュレス・消費者還元事業のように、ポイント利用のできる店舗とポイント付与者が別(いわゆる共通ポイント)の場合には、ポイント還元分は値引きではなく雑収入になります。このため、クレジットカードの利用明細等にポイント還元額の記載がある場合、個々の決済に還元額を按分することなく経理処理を行うことになります。
また、雑収入の税区分は、不課税として記帳しなければならないことにも注意が必要です。
ちなみに、ポイント利用のできる店舗とポイント付与者が同一(いわゆる自社ポイント)の場合には、ポイント還元は値引きの性質を持つこともありますので注意してください。

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