Netpress 第1903号 通常の役員・使用人とはここが違う! 「使用人兼務役員」の定義と報酬・賞与の留意点
1.使用人兼務役員とは、役員でありながら、部長、課長など使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます。
2.ここでは、税務上の「使用人兼務役員」の定義と、報酬・賞与を支給する際の留意点を確認します。
税務上の「使用人兼務役員」に該当すれば、役員給与のうち使用人分は賞与も含めて損金に算入されます(不相当に高額な部分の金額や、事実の隠ぺいまたは仮装経理により支給するものを除きます)。
したがって、使用人兼務役員に支給される給与のうち、使用人分については、定期同額給与の要件を満たす改定時期によらず、通常の従業員に対する給与の改定時期に改定することが可能となります。
そうすると、使用人兼務役員に対する給与は役員と比較して規制が緩いことになり、形式上は使用人兼務役員にして多額の給与を損金とし、課税を回避する可能性があります。
それを防ぐため、社長などの役員については、使用人兼務役員にはなれない規定が定められています。
1.使用人兼務役員の定義
使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます。
「使用人としての職制上の地位を有する」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等、法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位を持っているということです。
また、「常時使用人としての職務に従事する」ということですから、非常勤役員は使用人兼務役員になることはできません。
2.使用人兼務役員になれない者
次のような者は、使用人兼務役員になることができません。
1.代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
2.副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
3.合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
4.委員会設置会社の取締役、会計参与および監査役、監事
5.その他、使用人兼務役員になれない者として定められている者
なお、使用人兼務役員の条件を満たしていても、同族会社の使用人のうち、税務上、「みなし役員」とされる者も使用人兼務役員となりません。
3.使用人としての職制上の地位
実務上、使用人兼務役員の判定においてまずやるべきことは、「使用人としての職制上の地位」を明確にしておくことでしょう。
使用人としての職制上の地位とは、「支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等、法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいい、取締役等で総務担当、経理担当などというのは使用人としての職制上の地位ではない」と法人税基本通達で説明されています。
「営業本部長」「管理本部長」など、会社の内部でどのような肩書をつけようと、それは自由です。しかし、使用人兼務役員の判定においては、その肩書が会社の組織上、どのように位置づけられているのか、さらにはその肩書の者の人数、取締役と兼務している者の人数などの点を総合的に勘案して判断されますので、その地位を明確にしておく必要があります。
4.役員報酬と従業員給与をどのように区分するか
使用人兼務役員について、使用人分と役員分をはっきり分けている会社は少ないように思われます。
役員給与のうち使用人分は、原則として損金の額に算入されますし、労働保険(雇用保険、労災保険)が適用されます。会社法の観点からも、役員給与規程等により役員分と使用人分とを区分しておくことが重要です。
では、実際に、使用人分と役員分は、どのように区分すればよいのでしょうか。
たとえば、使用人兼務役員は役員ではありますが、常時使用人としての職務に従事していますので、通常であれば、給料手当(使用人分)のほうが高くなるはずです。
また、労働保険の適用においても、役員分よりも給料手当のほうが低額である場合には労働者性が低いと判断され、適用対象とすることができなくなりますので、留意する必要があります。
5.使用人兼務役員に支給する賞与の注意点
使用人分として支給した賞与であっても、不相当に高額な部分の金額は損金不算入になります。したがって、他の使用人に対する賞与と同様の計算方法によって賞与額を算出・支給する必要があります。
また、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給した場合には、金額の多寡にかかわらず、「不相当に高額な部分の金額」に該当するものとして損金不算入とされます。
したがって、使用人部分の賞与の金額や支給時期については注意が必要です。
■使用人兼務役員に対する給与の法人税法上の判断基準
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