Netpress 第2317号 実践し、成功に導くために サステナブル経営で乗り越えるべき3つの難所

Point
1.このところ、サステナブル経営(持続可能な経営)の重要性がますます高まってきました。
2.ここでは、サステナブル経営の難所を乗り越えるために役立つケースとチェックリストを提供します。


慶應義塾大学SFC研究所所員
サステナビリティ総合研究所所長
株式会社Scrumy代表取締役社長
笹埜 健斗


いざサステナブル経営を始めようとしても、次に示した「3つの難所」を乗り越えなければ、環境的・社会的・経済的な利益を最大限に引き出すチャンスを逃してしまいます。




本稿では、それぞれの難所の特徴を理解し、それらを乗り越えるために役立つケースとチェックリストを提供します。

1.第1の難所:乗り遅れの川(Dinosaurs’ River)

乗り遅れの川は、持続可能性に対する無関心や誤解が最大の原因です。持続可能性に対する無関心や誤解は、サステナブル経営の大きな障害となります。


持続可能性は、単に「環境に優しい」行動をとること以上の意味を持ち、企業が長期的に成功するために、環境的・社会的・経済的な要素をバランスよく管理する必要があるという考え方に基づいています。


<ケース>

A社(製造業)では、エネルギーコストを削減し、環境負荷を減らすことが、ブランド戦略に繋がることが十分に意識されていない状況です。しかし、サステナブル経営により、重要課題を特定し、リスクと機会を分析して、市場の変化に対応したブランド戦略を打ち出すことができるはずです。


<チェックリスト>

A社における持続可能性への意識を高めるために、どのような議題を設定すると効果的でしょうか?

A社における持続可能性への意識を高めるために、どのような教育や研修を提供すると効果的でしょうか?

A社における持続可能性への意識を高めるために、どのような情報を発信すれば効果的でしょうか?

2.第2の難所:継続コストの谷(Valley of the Cost)

継続コストの谷は、誤った戦略によるサステナビリティ関連業務の肥大化が最大の原因です。サステナビリティ担当者は、グループ会社やサプライチェーン全体での情報共有に日夜奔走し、開示基準の標準化をはじめとした最新の国際動向にも目が離せない状況です。それに加えて、持続可能性の取り組みが長期的な投資を必要とし、その利益がすぐには現れないため、短期的な利益に重点を置いてしまう場合があります。


<ケース>

B社(小売業)では、初期投資が高くつくことから、持続可能なパッケージングに移行することに対する不安やためらいがある状況です。しかし、サステナブル経営により、廃棄物処理コストの削減、環境意識の高い消費者からの注目、税制優遇や助成金の可能性によって、長期的には投資が回収できることを定量的に示すことができるはずです。


<チェックリスト>

B社にとって、短期的な利益だけでなく長期的な利益をもたらす持続可能性への取り組みを特定するために、どのような具体的戦略を立案すべきでしょうか?

B社が持続可能性の取り組みに関連する潜在的な投資のリターンを示す財務モデルを作成する際に、どのような主要要素を考慮に入れるべきでしょうか?

B社の戦略計画に組み込まれた持続可能性の目標に対する進行状況を定期的にレビューし、報告するのに最適な方法は何でしょうか?

3.第3の難所:ウォッシュ規制の海(Regulators’ Sea)

ウォッシュ規制の海は、世界の金融市場における国際的な法制度・政治・経済レベルの大きな潮流が最大の原因です。日本にとっても決して他人事ではありません。さらに、CEOやCSO(最高サステナビリティ責任者)をはじめとした経営層がサステナブル経営に参画できていない場合、ウォッシュ規制の危険性はさらに高まります。


ウォッシュ規制の「ウォッシュ」とは、“洗う”という意味ではなく、「whitewash」(=欠点を隠すためのごまかし、取り繕い)から派生した言葉です。近年耳にすることが増えた「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」とは、企業や組織が自社を実際よりも環境に優しい、または持続可能なものであるかのように見せるために採用する、欺瞞的または誤解を招く行為を指します。故意でない場合でも、環境に配慮したことを消費者にアピールするために、製品、サービス、または企業の活動を通してアピールしているケースも「ウォッシュ」に含まれます。


<ケース>

C社(情報通信業)では、持続可能性への関心が高い従業員が多い一方で、経営層からの理解が十分に得られておらず、持続可能性の取り組みを実行するために必要な人員や予算を確保することが難しい状況です。しかし、サステナブル経営によって、経営層に対して適切な先行事例を提示し、自社の経営戦略にも繋がることを示すことで、必要な人員や予算を確保するとともに、スムーズに実行することができるようになるはずです。


<チェックリスト>

C社がウォッシュ規制の危険性を下げるには、誰が、どんな情報を、どのような方法で共有することが重要でしょうか?

C社が持続可能性に関するサクセッションプラン(後継者育成計画)を策定するためには、どのような要素を、どのような手順で言語化することが必要でしょうか?

どのような先行事例を分析すると、C社の経営戦略にとって有効な結果を導くことができるでしょうか?



3つの難所を意識しながらサステナブル経営を実践することで、環境的・社会的・経済的な利益を大きく享受することができます。サステナブル経営は、企業が競争力を保ち、長期的な成功を達成するための重要な戦略となります。


持続可能性は、単なるトレンドではなく、現代のビジネスにおける必須の要素です。それは、私たち人類が直面している環境的・社会的・経済的な課題に配慮し、同時にビジネスの成功を達成するための道筋を示してくれています。



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