Netpress 第2311号 初期・中期・後期キャリア別 女性特有の健康課題 企業は適切な介入支援を!

Point
1.女性の健康は、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンの影響を大きく受けています。
2.これら女性ホルモンの分泌量は、約1か月という短い月経周期の中はもとより、一生の間でも大きく変化するため、それぞれのライフステージにおいて、様々な女性特有の健康課題が生じます。
3.ここでは、女性たちが直面する健康課題やその対策について、キャリアステージごとに解説していきます。


株式会社リンケージ
岡田 花子


1.初期キャリア

初期キャリアは、新卒入社から10年未満となる、主に20代の女性の多くがキャリアの方向性を決める時期です。中には転職や進学をする人もいるでしょう。また、結婚や出産を経験する女性もいるかと思います。


では、20代の女性たちは、具体的にどのような健康課題に直面するのでしょうか?


〇月経困難症

月経困難症とは、月経に伴って起こる病的な状態を指します。下腹部痛や腰痛など一般に月経痛と呼ばれる症状に加え、吐き気、頭痛、疲労や脱力感、おなかの張り、食欲不振、下痢、憂うつ、イライラなどの症状も含まれます。


月経困難症は、特定の疾患のない機能性月経困難症と、疾患(子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症など)が原因となっている器質性月経困難症の2種類があります。


〇子宮内膜症

子宮の内側を覆う粘膜を子宮内膜といいます。子宮内膜症とは、子宮内膜に似た組織が子宮の内側以外の場所で発生・増殖する病気です。強い月経痛をともなうことが多く、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状、腰痛、性交痛、排尿痛、過多月経や不正出血が見られる場合もあります。20~30代の女性に多く発症し、不妊症の原因にもなります。


子宮内膜症は、治療を行っても再発頻度が高いことから、長期にわたる経過観察が必要となります。


<対策>

最も効果的な対策は婦人科受診です。多くの女性は、月経に伴う症状だけでは婦人科の受診をためらいますが、仮に一見健康な状態であったとしても、定期的に身体の状態を診てもらうことは重要です。命に直接関わるものでなくても、月経痛や過多月経・貧血の原因となっていたり、将来的な妊娠・出産に影響を及ぼしたりする可能性もあります。

2.中期キャリア

新卒入社後10年から25年前後、主に30代から40代前半は、これまでのキャリアの中で培ってきた専門性を高めていくと同時に、妊娠や出産という大きな節目を迎える人も多いかもしれません。


30代になると、エストロゲンの分泌量はピークに達するため、ホルモンの影響による不調が出やすくなります。妊娠・出産を考えている人は、排卵日や月経周期に合わせて、しっかりとライフプランを立てましょう。


〇月経前症候群、月経前不快気分障害

月経前症候群は、月経前に3〜10日間続く精神的、身体的症状で、月経開始とともに和らぐか、消えていくことが特徴です。月経前症候群の中でも、情緒不安定、抑うつ気分、不安感、怒り、イライラ感情など、日常生活に支障をきたすほど強い精神症状を月経前不快気分障害といいます。


〇子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の壁の中にできる良性腫瘍です。30歳以上の女性の約4人に1人にできるといわれています。症状がまったく出ない人も多くいますが、強い月経痛や貧血、頻尿、便秘といった症状があります。悪性腫瘍に変化することはほとんどありませんが、妊娠を考えている場合は、不妊症の原因にもなることがあるため注意が必要です。


〇婦人科がん

婦人科がんは、卵巣がん、卵管がん、子宮頸がん、子宮体がん、腹膜がんなど多岐にわたります。その中でも最も多く見られるのが子宮頸がんです。子宮頸がんは通常、初期にはほとんど自覚症状が出ないことで知られています。


<対策>

月経前症候群は、直接命に関わる病気ではないものの、辛い症状が毎月起こり、日常生活や仕事に支障が出ている場合には、早めに婦人科を受診することをおすすめします。また、十分な睡眠、適度な運動、バランスのとれた食事、カフェインの多いもの・アルコールの摂取を控えることや禁煙も、月経前症候群対策に役立つとされています。


一方、子宮頸がんなどの婦人科系疾患は初期に自覚症状が出ないことも多いので、定期的な婦人科受診が重要です。特に子宮頸がんは、自治体の定期検診や健康保険組合の検査費用の補助などがあれば、有効活用しましょう。

3.後期キャリア

新卒入社後25年目以降の40代後半から50代の女性は、これまでの経験をもとに管理職などへ昇進する人もいれば、仕事と育児、さらには介護の両立に直面する女性も多いかもしれません。一方で、40代後半から50代前半にかけて多くの人が閉経を迎えるため、更年期障害といった課題も立ちはだかります。


〇更年期障害

閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた約10年間を更年期といい、月経周期の乱れやエストロゲンの欠乏により心身に様々な不調が現れます。症状の種類や強さは個人差がありますが、更年期の様々な不調を更年期症状といい、仕事や家事など日常生活に支障をきたしてしまうほどの重いものを更年期障害といいます。


〇閉経

自然な状態で1年間、月経がこなかった場合に閉経したといえます。閉経すると、卵巣が女性ホルモンを十分に分泌できない状態となり、ホルモンバランスの崩れから様々な症状が現れます。


<対策>

更年期障害は、崩れたホルモンバランスを調整するホルモン補充療法などで症状を和らげることができます。更年期障害の予兆は、月経周期の異常として現れることが多いので、月経周期が乱れてきた、最近疲れやすい・だるい、といった症状でお悩みの方は、婦人科を受診するようにしましょう。


更年期障害を放置せず、きちんと治療することで、老年期に突入した際の女性のQOL向上も期待できます。「辛いのは今だけ」と我慢することなく、10年先を見据えて婦人科を受診することをおすすめします。



女性は年代ごとに様々な女性特有の健康課題が立ちはだかり、多くの場合、通常の健康診断だけでは気づくことは難しいでしょう。女性が自身の健康課題に気づき、婦人科を受診できるような支援は、女性自身の健康状態の改善はもちろんですが、企業の生産性向上にも寄与します。個人の健康を個人の問題として放置せず、企業が適切に介入支援することで、企業と個人の双方にとってWin-Winな関係を築けるのではないでしょうか。



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