Netpress 第2085号 適切な対応方法は? パート・有期雇用者への「説明義務」を確認する
1.改正パートタイム・有期雇用労働法により、非正規雇用労働者に対する待遇の説明義務が強化されたことから、企業には適切な対応が求められます。
2.ここでは、具体的にどのような事項について、どう説明する必要があるのか、実務対応を確認します。
社会保険労務士法人 HRM
社会保険労務士 落合 敏夫
2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から適用された改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)では、事業主のパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者への待遇に関する説明義務が拡大・強化されました。
1.待遇に関する説明義務の強化
改正法では、通常の労働者とパート・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などの待遇について不合理な待遇差を設けることを禁止するとともに、パート・有期雇用労働者から求めがあった場合、「通常の労働者との待遇差の内容と理由」などについて説明することが義務付けられました。
改正法により、説明義務が強化された内容は下表のとおりです。
2.待遇差の比較対象となる通常の労働者
待遇差について説明を求めたパート・有期雇用労働者の①職務の内容(業務の内容と当該業務に伴う責任の程度)、②職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用等)などが、最も近いと事業主が判断する通常の労働者と比較して、その待遇差の内容と理由を説明しなければなりません。
したがって、説明を求めたパート・有期雇用労働者の比較対象となる通常の労働者を、次の基準に従って選定する必要があります。
(1)「職務の内容」(業務の内容と当該業務に伴う責任の程度)の同一性判断基準
①職種が同じか
②従事している中核的業務が実質的に同じか
「中核的業務」とは、その職務を代表する中核的な業務を指し、当該職務に不可欠な業務、業務の成果が事業所の業績等に影響を与える業務、当該労働者の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務という基準に従って総合的に判断します。
③責任の程度が著しく異ならないか
権限の範囲、成果について求められている役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待度等を総合的に判断します。
(2)「職務の内容・配置の変更の範囲」(人材活用の仕組みや運用等)の同一性判断基準
①転勤があるか
②転勤の範囲が実質的に同じか
③職務の内容・配置の変更があるか
④職務の内容・配置の変更の範囲が実質的に同じか
(3)比較対象となる通常の労働者の特定
上記の判断基準により、最も近いレベルとして特定した通常の労働者と説明を求めたパート・有期雇用労働者との待遇を比較して、その相違内容・理由を説明することになります。
3.待遇差の内容と理由の説明
(1)待遇差の内容の説明
①通常の労働者とパート・有期雇用労働者との間で、待遇に関する決定基準に相違があるかどうか
②次のaまたはbに掲げる事項
a.通常の労働者とパート・有期雇用労働者の個別具体的な待遇の内容
b.通常の労働者とパート・有期雇用労働者の個別具体的な待遇の決定基準
(2)待遇差の理由の説明
事業主は、通常の労働者とパート・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲その他の事情に基づき、客観的・具体的に待遇差の理由を説明する必要があります。
4.説明の方法
パート・有期雇用労働者がその内容を理解できるよう、資料を活用しながらの口頭説明を基本とします。
ただし、パート・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えありません。
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