Netpress 第2305号 時代の転換点 AI活用で日々の業務はこう変わる

Point
1.AIと上手に協調することで、生産性はより高まり、発想やアイディアの幅も大きく広がります。
2.AIは決して近寄りがたいものではなく、慣れて使い方を覚えてしまえば非常に強い味方となります。


さくら情報システム株式会社
コンサルティング部 松澤 文明


1.IT革命(インターネット革命)とAI革命

国の重要戦略に掲げられたり、それに関するニュースを耳にしない日がないくらい、AI(人工知能)が非常に注目を集めています。


以前は研究者やエンジニアなどの一部の専門家しか扱えなかった技術が、目覚ましいスピードで進化し、ChatGPTに代表される対話型のAIが登場したことで、一気に広まり、誰でも手軽に、かつ実用的に使えるようになりました。


これは、インターネットが登場した頃にとてもよく似ていると筆者は考えています。


インターネット以前のビジネス・コミュニケーションは、電話やFAX、紙が中心で、業務の進め方もそれらが前提となっていました。しかし、インターネットが広く一般に普及してからは、電子メールやファイル、データといったパソコンでの業務スタイルが当たり前になり、さらにはeコマース、クラウドといった新しいビジネスが次々に登場し、産業構造そのものが大きく変化したという、いわば革命の歴史は、皆さんもご承知のとおりです。


かつてインターネットがそうであったように、AIによって今、大きな時代の転換点を迎えています。今後、AIと適切に協調できるかどうかが、ビジネスの大きな成功の鍵になりますので、しっかりとキャッチアップしていきましょう。

2.AIの得手不得手

AIと協調するうえで重要なのが、AIの得意な部分、不得意な部分をしっかりと押さえておくことです。


まずは、AIの得意な部分です。AIは非常に大量のデータを学習しており、たとえば「就業規則に記述するべき一般的な項目」や「飲食業界のマーケットサイズのような統計情報」といった情報の収集、分析や、大量データから導き出す知識の提供は得意です。


しかし、AIにも不得意な部分があります。AIが学習できないデータ(ある会社の社外秘の情報など)、データになっていない情報、学習できていないか学習が進んでいない新しい情報などがあると、その部分を考慮できずに回答するため、誤った情報や情報としては物足りないものを返答してくることがあります。


ただ、そうした場合には人間が補正したり、状況や情報を踏まえて判断したりすることで、非常に高い生産性が得られるようになります。

3.AIの業務適用

皆さんにとって身近な業務でAIを適用する場面をいくつかご紹介しましょう。


(1)文書の作成

文書の作成という局面では、プレゼンテーションの構成や稟議書の文例、取引先に送る適切なメールの文例の取得、会社や商品、サービスなどのPR文の作成といったものがあります。


(2)分析、統計

分析、統計という局面では、○○業界マーケット分析や統計情報の取得、営業訪問先のIR情報や業務内容を短時間で端的にまとめる、といったことができます。


(3)その他

業務課題の解消法のアイディアを出させることや、説明の妥当性を立証する論拠、論理を出させるなどもできます。


このように個人業務の内容だけでも、たくさんの適用シーンが考えられます。

4.AI活用のコツ

AIは非常に優秀なのですが、きちんとした指示を与えなければきちんと動きませんので、人間が的確に指示を与えることが肝要です。そこで重要になってくるのが、「プロンプトエンジニアリング」というものです。


プロンプトエンジニアリングとは、人間がAIから意図するような結果を得るために、プロンプトと呼ばれる質問入力欄にAIが正しく理解できるような質問を行うための技法です。


以下、AIから精度の高い回答を引き出すためのコツ(すぐにできる基本的なもの)を、解説を交えてご紹介します。


(1)最新で最も適したモデルを使用する

最新かつ利用目的に最も適したモデル(製品)を使用することで良い結果を得られます。


最新のモデルは回答の正確性が上がっている場合が多く、古いモデルは質問内容によっては学習データが少なく、回答できないことがあるためです。


(2)指示を出す時には、背景となる情報や具体的な説明を詳細に記載する

AIは、指示される時の前提や状況がわからず、回答が曖昧になってしまうことがあります。


たとえば、「Aというパッケージソフトの提案書を作って」と指示するよりは、「飲食店へ、〇〇業務の改善のためにAというパッケージソフトを使った提案書を作って」というように、なるべく具体的に指示したほうが、その状況により適した回答を得ることができます。


(3)指示は定量的な表現にし、あいまいな指示や不正確な指示を減らす

「たくさん」や「少なく」などの定性的な表現ではなく、具体的な数値を使うことが望まれます。


たとえば、「少ない」というのは、2~3個以内なのか、10個以内なのかなど、きちんとAIに示してあげることが大事です。


(4)禁止事項を指示するだけではなく、その代わりにどうするべきかを指示する

より良い回答を得るには、やはり指示者がどうしたいか、どういう方向性の回答が欲しいかをAIに指示すべきです。


たとえば、「専門用語は使わないで、普通の人が理解できるように説明して」といった具合です。


(5)出力例や表示順を提示するなどして、出力のフォーマットを明確に指示する

出力のフォーマット(形式を含めて)を示してあげることで、良い回答が得られます。


たとえば、CSV形式で出力すると明示したり、アイディアのお勧め順に表示させたりするなど、適切に指示することでより良い回答が得られます。



いかがだったでしょうか。今はまだAIを扱うのは難しいと感じるかもしれませんが、皆さんがパソコンやインターネットを使い始めた頃と同じように、できるだけたくさん触れたり、試行錯誤したりすることで、上手に扱えるようになります。無料で使えるAIもありますので、今からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


ただし、機密情報を入力してしまうなどの情報漏洩にはくれぐれもお気を付けください。



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