Netpress 第2292号 より見やすく、使いやすく 仕事の属人化を防ぐ「業務マニュアル」の作り方
1.会社の業務について「その人にしかわからない」ということがあると、業務内容が客観的に見えにくくなり、何かあったときに仕事の流れが滞ってしまいます。
2.ここでは、仕事の属人化を防ぎ、業務効率を上げるための業務マニュアルの作り方を紹介します。
特定社会保険労務士
米澤 裕美
1.業務マニュアルで得られる効果
(1)業務を正確に引き継ぐことができる
業務マニュアルがあれば、後任者に効率よく業務の引き継ぎをすることができます。後任者としても、マニュアルで業務内容が明文化されていたほうが内容を正確に理解できますし、仕事を早く覚えられるでしょう。
(2)業務手順を忘れるのを防ぐ
年に1回あるいは数回しかないような業務については、前回の記憶が薄らいでしまうことがあります。マニュアルを作成しておけば、忘れたり記憶が薄らいだりしていても、スムーズに業務手順を思い出すことができます。
(3)情報伝達力が身につく
頭のなかにある業務のやり方を言語化していくと、業務内容が整理され、改善点も見えてきます。言語化できることは1つのスキルですが、マニュアルを作ることでそのスキルが上がります。
2.マニュアルを作成する前に検討すべきこと
(1)個人で作るか、チームで作るか
仕事を1人で行っている場合は、自分用のマニュアルを作成することになります。複数の人とチームで仕事をしている場合は、マニュアルを作り始める前に、自分用のマニュアルとして作成するか、それともチームで共通のマニュアルとして作成するかを話し合っておくとよいでしょう。また、各人が自分用に作成する場合でも、部内あるいはチーム内でフォーマットを共通にしておくと、お互いに理解しやすくなります。
(2)どのツールを使うか
業務マニュアルを作り始める前に、次のような事項も検討しておきましょう。
・ツールは何を使うか(エクセルを使うか、マイクロソフトやグーグルのデジタルツールを使うか、他のクラウドツールを使うか)
・作成したマニュアルのデータをどこに置くか(サーバ上に置くか、クラウド上に置くか)
業務マニュアルを作成するツールは、基本的にふだんから使い慣れているものをおすすめします。たとえば、エクセルを日常的に使っているのであれば、エクセルがよいでしょう。
マイクロソフトのワンノート(OneNote)やグーグルのグーグルサイト(Google Sites)も、業務マニュアルを作成する際に使いやすいツールです。
また、動画で業務マニュアルを作成することも考えられます。特にソフトウエアの操作方法をマニュアル化するときは、操作している手順を動画で撮ってマニュアルにするとよいでしょう。
日常的に使い慣れたもののなかから、マニュアル作りに適したツールを選ぶようにしてください。
(3)いつ作成するか
業務マニュアルが必要なことはわかっていながら、忙しくてなかなか手がつけられない、作り始めたものの途中で挫折してしまう、ということも少なくないものです。
それでも、「マニュアルの作成は重要な業務である」と位置づけて取り組んでいただきたいと思います。1年のなかでも比較的落ち着いている時期に「マニュアルを作る」という目標を立て、一気に作成しましょう。
3.エクセルを使ったマニュアル作りの例
ここからは、業務マニュアルを作成する際の具体的な作業を見ていきましょう。多くの人が日常的に使っているエクセルを例に説明していきます。
(1)業務の棚卸し
一口に業務といっても、たいていの場合、1人で多くの業務を担当していると思いますので、まずは業務の棚卸しと整理(カテゴリー分け)をしていきます。
たとえば、担当している業務には、毎日やること、月に数回やること、年に数回やることがあると思います。
そこで、「日々の業務」「月に数回の業務」「年に数回の業務」のように見出しをつけ、1セルに1つずつ業務を書いていきます(右図参照)。言ってみれば、業務を付箋に書き出して、それを貼っていくイメージです。
こうすることで、全体的な業務の棚卸しができます。マニュアル全体が入る箱を作るようなイメージで行うとよいでしょう。棚卸しした業務のなかで、重複がある項目は外し、同じような分類の業務はまとめていきます。これがマニュアルに掲載する「項目」になります。
(2)具体的な業務内容の記述
業務の棚卸しができて掲載項目が決まったら、項目名の横に数字を振ります。次にシートを追加し、シート名に項目名の横の数字を割り振ります。シート名を変更するときは、シートにカーソルをあわせて右クリックし、「名前の変更」でシート名を変更することができます。
ここからは、項目ごとに具体的な業務内容を書いていくことになります。文字情報に加えて、リンクを張ったり、画像を貼りつけたりすると、より見やすく、使いやすいマニュアルになるでしょう。
自分の担当業務のマニュアルが作成できたら、次は部内共通のマニュアルや全社共通のマニュアル作りにも挑戦してみましょう。総務や経理・人事の担当者は、さまざまな手続きや社内制度などの周知を図る機会が多くあります。そんなとき、社内で共通して閲覧できるマニュアルがあると、社員自ら確認することができ、同じ説明を繰り返さずにすみます。また、マニュアルがあると、業務内容が言語化されて客観的に見えやすくなりますから、業務の改善ポイントにも気づきやすくなります。ぜひ、効果的な業務マニュアルの作成に取り組んでみてください。
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