Netpress 第2084号 DX・AI活用のために 人工知能を担うデータ分析エンジニアの育成法

■Points
1.多くの企業にとって、デジタルテクノロジーに関する人材の育成・確保が喫緊の課題となっています。
2.DX・AI活用を進めたいと考えている企業がこれから取るべきアクションと留意点について解説します。


株式会社アイデミー 木之内 毅



DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの流れは、2019年頃から活発になっていますが、昨今のコロナ禍の影響もあり、さらに加速してきています。


DXの取り組みの範囲は非常に幅広く、特定の技術で定義されるものではありませんが、DXの効果をインパクトのあるものにしていくためには、データからさらなる価値を見出すことが可能であるAIの技術は必須となります。


そうした環境下において、DXを推進するうえでの課題として、デジタルテクノロジーに関するスキル・人材の不足が挙げられています。


DX・AI活用に必要となる人材のイメージと現状は次のとおりですが、非常に幅広い人材が必要となることが認識していただけるはずです。


【DX・AI活用に必要な人材のイメージと現状】


1.データ分析人材(データサイエンティスト)

a.社内に既にデータ分析人材がいるケースは少ない

b.市場価値が高く、外部からの採用が困難

c.外部から採用した場合は自社ドメインの知識がない

d.活用可能なデータが必要  ※現時点では活用可能なデータがないケースが多い


2.データ活用のための仕組みを構築するエンジニア

a.社内システムの担当者で充足できる可能性がある

b.アジャイル開発等のDXに親和性の高い開発手法を身につけている人材は希少

c.ビジネス要件には疎い


3.データやAIを活用した企画を立てるビジネスパーソン

a.AIやデジタルテクノロジーで何が実現できるのか/何に活用できるかイメージできない

b.データを蓄積する文化が定着していない


4.DXに関連するビジネスに取り組むミドルマネジメント

a.DXやAI活用方法の判断がつかない

b.活用した際の成果やリスクが適切に理解できない


5.社内外にDXの推進を打ち出す経営者

a.DXの取り組みが必要なことは理解できているが、どのような取り組みをすればよいかわからない


それでは、DX・AI活用に必要な人材は、どのようにすれば確保することができるのでしょうか。


【DX・AI活用を進めたい企業が取るべきアクション】


1.経営層から、変化に対するコミットメントの発信

a.情勢の変化を認識するためにトップからの社内メッセージが必要であり、危機感と価値創造のチャンスであることと、組織の変化を起こす意思を発信する必要がある。


2.DX・AI活用を推進するための組織の立ち上げ

a.トップからのメッセージに加えて、具体的な必要性を認知するための草の根の活動を行い、しっかりと現場部門に浸透させる。

b.活用したいという部門や個人を認識できたら、しっかりと技術面でのフォローを進めていく。


3.DX・AI人材の育成

a.全社で一貫した育成体制を取る必要はあるが、はじめの一歩は、活用可能性の高いR&Dや技術部門などの部門単位でスモールスタートさせたほうが、スピード感があり望ましい。全社共通で進める場合は、関係者が多いため推進方法がどうしてもウォーターフォール型(人材定義→教育体系検討→コンテンツ検討→対象選定→教育実施)となり、スピード感が遅く、かつ、教育と実際の技術活用の取り組みが分断されやすくなってしまう課題がある。


b.DX・AI人材の外部採用は、そもそも人材が市場にあまりいないことに加え、報酬が高く既存の人事制度の枠組みのなかでは採用の競争力がないことが多い。そのような課題もあるうえ、実際の活用を推進する際は適切な活用領域・方法が見出せるため自社のビジネス領域の知見者が望ましく、ロイヤリティの高い自社の社員にこの技術領域のナレッジを蓄積するほうが効率的と考えられる。


4.DX・AI活用プロジェクトを推進してみる

a.新しい取り組みであることに加え、AIという技術特性等も考慮すると、プロジェクトがうまくいかないケースが多くなる可能性が高い。しかし、この取り組みを行うことで課題が明確になり、今後のプロジェクトの成功確率が大きく改善する。このように、小さく始めて改善を繰り返すアジャイルなプロジェクトの取り組み方は、DX・AI活用には必須である。


b.想定される課題

 ⅰ.技術的特性

 ①既存データの品質が低い(活用できるデータがなかった、データそのものの精度が低かった)

 ②AIの推論精度が十分に上がらない


 ⅱ.人材のスキル不足

 ①AIモデル実装

 ②アジャイルプロジェクト推進


 ⅲ.組織の適合

 ①既存の運用ルールによって、クラウド環境、オープンソースなどが利用できない

 ②品質・投資基準が、プロジェクト開始前に定義できない(変動幅が大きい)ケースが多いDX・AI活用プロジェクトにフィットしていないため実施判断ができない



上記の一連の取り組みを実施すると、自社に必要な人材イメージが明確に顕在化できるうえ、このプロジェクトに関与したメンバーは、すでにデータ分析人材(自社ドメイン知識×データ分析)に一歩近づいています。さらには、この中から既にデータ分析人材として自立するメンバーが出てくる可能性は十分にあります。


このようなプロジェクトを進めることで、「やってみる人材」の発掘が期待できます。DX・AI活用の取り組みには、こうした人材は必要不可欠であり、次世代リーダーとしての期待を受ける人材となることが容易に想定されます。


もし、このような取り組みの推進に不安があるようであれば、クライアントの社内人材育成という目的を支援するパートナーとの協働も検討するとよいでしょう。



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