Netpress 第2280号 「高める」より「取り除く」が先決! 社員がやる気を失っていく会社その要因と改善策は?
1.人材が定着せず、社員の士気も上がらないといった悩みを抱えている会社は少なくないでしょう。
2.そんなときは、組織内に社員のやる気を削ぐような要因(問題)がないかチェックしてみましょう。
株式会社モチベーションジャパン
代表取締役社長 松岡 保昌
1.社員のやる気を削ぐ要因を把握する
多くの会社は、社員のやる気を高めることばかりに意識が向きがちですが、組織内にやる気を削ぐような問題はないでしょうか。もしあるなら、まずは「やる気を削ぐ要因」を知り、それらを取り除くことが先決です。
社員がやる気を失っていく組織に共通する特徴としては、主に次のようなものがあります。
(1)個人が仕事を抱え過ぎている
(2)仕事を押し付け合う
(3)物事を決められない
(4)前例と成功体験から抜けられない
(5)「理念」が言葉だけになっている
(6)マイナス要因の犯人探しに執心
(7)よくわからない人事異動がある
(8)いまだに長時間労働が美徳となっている
(9)女性が出世しない
(10)長期的な展望を描けない
以下では、このうち(1)〜(3)の3点について、その要因と改善策をみていくことにします。
2.なぜ社員はやる気を削がれるのか
(1)個人が仕事を抱え過ぎている
「仕事ができる人」のもとに仕事が集まるのはよくあることです。しかし、それがあまりにも極端な職場では、その不均衡が組織全体のモチベーションを下げる結果になりかねません。
次第に仕事が属人化していくことで、仕事を割り振ることができなくなり、「何があっても仕事を休めない。助けてもらえない」という事態になってしまいます。それが常態化すると、当初はやりがいを感じていた社員も「なぜ自分ばかり…」と被害者意識が芽生え、職場の雰囲気はギスギスしたものになります。
(2)仕事を押し付け合う
部署をまたがる仕事があると、「それは○○部の仕事でしょう」と押し付け合う光景がないでしょうか。そうした雰囲気が広がると、「どうせ誰かがやるだろう」「無理に頑張るのはバカらしい」と、組織内のやる気は削がれていきます。
(3)物事を決められない
管理職の机上に稟議書が山のように積まれ、決裁がなかなか下りないということは少なくありません。稟議書のメリットは、いちいち集まらずとも、決裁者がそれぞれに内容を精査することで精度を担保し、案件に取りかかれる点です。デメリットは、稟議を回すために時間がかかるのと、責任の所在が曖昧になりやすい点です。
そのメリット・デメリットを理解したうえで稟議に回しているのであれば問題はありませんが、とにかく稟議に回すことが目的のようになって形骸化し、ときには都合のよい責任逃れの隠れ蓑になるようなケースもあります。
そうなると、責任の所在も当事者意識も薄れて、仕事への熱意は下がる一方です。
3.社員のやる気を削ぐ要因を取り除く
(1)個人が仕事を抱え過ぎている → 情報・仕事の共有ができる仕組みをつくる
個人が仕事を抱え過ぎている職場では、意図的に情報・仕事を共有できる仕組みをつくることが大切です。共有の仕組みづくりとしては、次の2つの方法があります。
①ストック型
ストック型とは、過去の仕事内容をデータベースなどに蓄積し、共有する方法です。
たとえば、成功事例の経緯をまとめた書類や、大型受注に結びついた企画書などを保存しておきます。伝承が難しいノウハウなども保存し、検索機能を設けて必要なときにすぐに誰でも取り出せるよう「ストック」します。
こうすることで、仕事の属人化を防止・解消することができます。
②フロー型
フロー型とは、「いま困っていること」をその場で発信して、さまざまなアイデアや実際に取り組んでいる対策などを瞬時に共有し、解決していく方法です。
たとえば、営業担当者が顧客から従来とは異なる種類の要望を受けた場合などに、営業担当者がその事実を社内で発信します。そうすると、同じようなことで困っているほかの営業担当者を発見でき、情報交換をして対応策を探ることができるかもしれません。
ストック型もフロー型も、オンライン上で情報を共有できる仕組みをつくれば、組織内で瞬時に課題を共有して助け合える環境を整えることができます。
(2)仕事を押し付け合う → 「全体最適の視点」を醸成して当事者意識を高める
仕事を押し付け合うような職場においては、組織内に「全体最適の視点」を醸成して、社員の当事者意識を高めることが大切です。
各部署にはそれぞれの役割があり、1人ひとりの仕事は全体とつながっています。それらがうまく融合することで、会社全体が機能して売上や利益を出しているはずです。この「会社全体でよくなっていく」という認識を浸透させることが重要です。要は、「自分の部署だけがよければよい」のではなく、「会社全体でよい状態をつくっていく」という意識(=全体最適の視点)を、いかに持てるようにするかが大切なのです。
そのためには、社員間での相互理解や信頼関係の構築(=関係の質の向上)が必要となります。
(3)物事を決められない → 形骸化した稟議システムを廃止する
変化が激しく、情報が瞬時に伝わる現代において、「決めるリスク」と「決めないリスク」でいえば、「決めないリスク」の比重が高まっています。物事を決められない職場においては、意思決定のスピードアップが不可欠です。
スピードアップのためには、管理職だけでなく現場の一社員に至るまで、徹底した当事者意識が求められ、当事者意識を高めるには、意思決定のプロセスを変えることが効果的です。まずは、形骸化した稟議書文化を脱しましょう。
そして、誰もが臆することなく意見を言えるような場を設けることで、社員各人が当事者意識を持って、1つひとつの仕事に邁進するようになるでしょう。
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