Netpress 第2273号 基礎から解説 新時代を迎えたAIの「今」と「これから」

Point
1.AI(Artificial Intelligence)の基本的な仕組みを知って、AIを上手に活用することが重要です。
2.急速な進化を遂げているAIとうまく「協調」して、業務効率を向上させることを目指しましょう。


さくら情報システム
技術開発部 松澤 文明


最近、様々なメディアで取り上げられて話題になっている『ChatGPT』。あの有名なイーロン・マスク氏(現在は退任)らによって設立されたOpenAIという団体によって開発されたAI(Artificial Intelligence)の一種です。この例のように、AIと聞くと、最新テクノロジーと思いがちですが、実は、1950年代からAIの概念はありました。


これまでは、AIの技術が未熟であったことや、コンピューターの性能不足といった理由から、現実的に使えるものとして実現するのは難しいとされてきました。しかし、2010年代になってAIを現実的に実現できるような技術やコンピューターが登場し、次第に一般化しつつあります。


今回は、そんなAIについてのお話をしたいと思います。

1.AIの仕組み

AIというと、皆さんはどのようなものを想像するでしょうか。


AIにもさまざまな形態があるのですが、代表的なイメージを示すと下図のようになります。



AIの本体は、モデルと呼ばれるプログラムです。このモデルにさまざまなデータを用いて学習させます。


そして、モデルを調整した後、新たなデータや指示を学習後のモデルに与えることで結果を出力します。


皆さんが普段、お使いになるAIは、この学習後のモデルを指しています。


たとえば、企業のホームページで利用者の質問に回答するチャットボットはAIを使っています。チャットボットの場合、過去にあった多くの質問と回答や想定問答などをモデルに与えることで学習し、学習後のモデルが質問を分析して人間の代わりに回答しています。

2.AIの基礎用語

ここまでAIの仕組みをみてきましたが、ニュースや記事などでよく出てくるAIに関する専門用語をいくつか確認しておきましょう。以下の専門用語を知っているだけでも、AIへの理解を深めることができるようになると思います。


用  語
説  明
機械学習
人間の学習に相当する仕組みをコンピューター等で実現するものであり、一定のアルゴリズムに基づき、入力されたデータからコンピューターがパターンやルールを発見し、それらを新たなデータに当てはめることで、その新たなデータに関する識別や予測等を可能とする手法
ニューラルネットワーク
機械学習の一種で、脳の神経回路をコンピューター上で模倣したもの。ニューロンと呼ばれる神経細胞の動きをコンピューターで模倣し、その集まりをネットワークとして表現
ディープラーニング
より大きなニューラルネットワークを使うことによって、複雑なパターンやルールをAI自らが発見できるようにしたもの。文章や画像といったいろいろな種類のデータに対応でき、分類や生成といったさまざまなタスクに応用が可能。近年の高い半導体技術によって普及
シンギュラリティ
「技術的特異点」ともいい、AIなどの技術が、人間より賢い知能をAI自ら生成することが可能になる時点
エキスパートシステム
法律や医療などの特定の専門分野の知識を持ち、専門家のように事象の推論や判断ができるようにしたコンピューターシステム


3.従来のAIとジェネレーティブAI

「ジェネレーティブAI」(「生成AI」とも呼ばれます)という新技術が今、注目を集めています。


従来のAIは、大量のデータから「特徴」を学んで「最適解を答える」ものです。AIがその特徴を学ぶためには大量かつ質の高いデータが必要で、そうした十分なデータがないとよい結果を得られるAIを作れませんでした。


ジェネレーティブAIは、次世代のAIとも呼ばれ、「コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法」と定義されます。つまり、これまでのデータを学習し、人の指示に応じて文章や画像、プログラムコードなどをゼロから「新たに創作」できる技術なのです。


たとえば、テーマ(指示)を与えると、まるで人間が描いたかのような新たな絵画を描くAIや新たな曲を作曲するAIがそれに当たります。冒頭で触れた「ChatGPT」もジェネレーティブAIで、まるで人間が応答しているかのように返答する文章生成AIとして、一躍有名になりました。


少し前までのAIでは、明らかにコンピューターが作ったとわかるもの、品質も今ひとつというものも多かったのですが、人間と遜色がないものを提供するAIが登場し、その進化が社会全般に大きな影響を及ぼしていくことになるでしょう。

4.今後のAIの活用

内閣府が「AI戦略2022」でAIに注力する戦略を示していることや、今後の日本の労働人口の減少傾向を考えると、AIはさまざまな場面で使われることが予想され、こうしたAIを利用することで生産性を大きく高められる可能性があります。


たとえば、ジェネレーティブAIが各種の企画書や資料、文書の作成、プログラミングといったホワイトカラーが行っていた仕事を代替するなどのこれまで自動化、効率化が難しかった分野に対しての生産性を飛躍的に上げたり、ロボットとAIを組み合わせたAIロボットが従業員の代わりとなって人材不足を補ったり、センサーやカメラといったIoTデバイスとAIを組み合わせて、これまでは熟練したスキルをもつ人だけができていた検品などの作業が高速かつ正確にできたりすることで、企業の生産性は大きく向上する可能性があるのではないでしょうか。



「AI戦略2022」のなかに、『「AIは人の仕事を代替する」のではなく、「AIは人と協調する」という認識を持たないと、AIの利活用の幅は限られる』とあります。皆さんも今後、普段の生活はもちろんのこと、「業務」でAIと協調していく場面が増えていくことでしょう。今回は人間(私)がこの記事を書いていますが、AIが書く日が来るのも近いかもしれませんね。


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