Netpress 第2265号 中小企業だからこその可能性 エンゲージメントスコアで会社の将来性を高める
1.エンゲージメントスコアは、「満足度」と「期待度」の2軸で会社の課題を可視化するものです。
2.従業員の会社に対する「期待度」がわかれば、会社の停滞状況や将来性が見えてきます。
3.中小企業だからこそスピード感のある変革を進め、将来性を高めていくことができる可能性があります。
セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩
1.満足度だけで判断しないエンゲージメント調査
従業員満足度調査が発展したエンゲージメント調査の結果を「エンゲージメントスコア」と呼びます。満足度だけでなく、会社に対する期待や愛着を含めた調査結果は、経営者にとっても大いに気になるところでしょう。
弊社(セレクションアンドバリエーション)でも、エンゲージメント調査のサービスを提供していますが、会社によっては相当なショックを受けられることもあります。
典型的なエンゲージメントサーベイは、「満足度」と「期待度」の2軸で調査を実施します。
設問項目としては、「給与の他社比較」「給与の決め方」など金銭に関するものにとどまらず、「職務への満足と期待」「教育整備状況」「キャリアモデルの有無」といった金銭にとらわれない設問も多くあります。
また、「経営幹部の手腕」や「組織としての連帯感」、さらには「事業の社会的意義」「新しい価値の創造」「継続的改善」なども尋ねることで、従業員の損得だけでなく、幅広く会社の在り方について現状を確認できることもポイントです。
その結果を課題として具体化し、対策を検討するのですが、大まかには4つの課題に分けることができます。
満足度と期待度の回答結果を偏差値で表したグラフの例を見てみましょう(下参照)。
このグラフでは、右に行くにつれて期待度が高く、上に行くにつれて満足度が高くなります。
右上は、期待もあり満足もしている領域です。
この領域にたくさんの項目が入る会社は、とても優れた会社です。
右下は、期待しているものの不満な領域です。
弱みではあるのですが、期待されているのですから、緊急対策を実施して満足度を引き上げられれば、強みに切り替えることもできるはずです。だからチャンスとも言えるでしょう。
満足度調査と大きく異なる点として、左側の期待度が低い領域が可視化されることが挙げられます。グラフの左側に回答が集まる状況は、会社に停滞感が蔓延していることを表します。満足、不満足にかかわらず、「そもそも期待していないのでどうでもいい」というあきらめの気持ちにも似ています。
実際の調査においても、左側に回答が集まる組織では、言われたことを粛々と進めるだけの、自主性の低い傾向が見て取れました。
2.期待度を可視化することで会社の将来性が高まる
エンゲージメント調査に否定的な考えを持つ経営者もいらっしゃいます。従業員の不満を解消したところで会社が儲かるわけではない、という考え方にも一理あるかもしれません。
しかし、エンゲージメントスコアで確認できる「期待度の低迷」は、組織としての深刻な状況を表しています。だからこそ従業員満足度にとどまらない、エンゲージメントスコアを可視化する企業が増えているのです。
特に気を付けるべきは、左下の領域に回答が固まっている場合です。
弊社が実施した事例で、製造部門の回答結果が左側に集中していたものがありました。その内容を精査すると、深刻な状況が読み取れました。
その会社の製造部門では、左下の「不満だが期待していない」領域に、「教育訓練の充実」「責任の明確化」「昇進昇格の公平さ」「キャリアモデル」「賃金の他社比較」といった回答が並んでいたのです。そして、右側の領域には何も表れていませんでした。
エンゲージメント調査を実施した後、あらためて製造部門のキーパーソンにインタビューすることで、より具体的な状況が見えてきました。
この会社では、前経営者のワンマン体質が長く続いたため、自らものを言う製造部門の社員が皆無になっていたのです。給与は低いし、あこがれるような上司もいない。でも、他の会社に転職もできないから、ただ言われた作業を日々行っている、という状況が可視化されました。
もし従業員の満足度を測るだけの調査だったら、そこまでの傾向はわからなかったでしょう。この会社は、その後人事の総合的な変革に取り組み、自発性のある社風への転換を進めていきました。
3.中小企業だからこそ期待度を高めて成長を目指す
従業員満足度調査とエンゲージメント調査。その根本的な違いは、会社と従業員との関係性の変化です。一言で言えば、雇用におけるフェアな関係が求められるようになっている、ということでもあります。
これまでに私が見てきた中小企業では、「うちみたいな会社に優秀な人材はこない」と愚痴を言いながらも、実際に働いている人たちに対しては「雇ってやっている」という意識を強く持っている例が数多くありました。その典型が「給与分働いてもらわないと困る」というような言葉です。
しかし、今は極めて優秀というわけではなくとも、気軽に転職ができる時代です。従業員に対して上から目線の経営では、まともな人材が残らなくなりつつあります。
また、その一方で「働くなら大企業がよい」という風潮も薄まりつつあります。上意下達や年功序列の古い体質のままの大企業が容易には社風を変えられない状況のなかで、小さい会社だからこそスピード感のある経営を進め、現場の自発性を尊重し、適材適所を実現できる場合が増えているからです。
「中小企業」であることがデメリットではなく、メリットとして受け止められる場合すら生まれつつあるのです。
ぜひエンゲージメントスコアを可視化し、フェアな関係性を構築することによって、強い企業としての成長を実現してください。
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