Netpress 第2251号 学びの好循環を実現! 学び・学び直しを促進する厚生労働省のガイドライン

Point
1.企業を取り巻く環境が急速に変化するなか、労働者の学び・学び直しの必要性が高まっています。
2.昨年、厚生労働省が策定した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の内容を確認します。


社会保険労務士法人大野事務所
特定社会保険労務士
今泉 叔徳


厚生労働省は、職場における人材開発(人への投資)の抜本的な強化を図るため、2022年6月に「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」といいます)を策定し、公表しました。


以下、ガイドラインの内容を確認するとともに、企業がガイドラインをどう活用していくべきかについて解説します。

1.ガイドラインの概要とポイント

ガイドラインは、「Ⅰ 基本的な考え方」「Ⅱ 労使が取り組むべき事項」「Ⅲ 公的な支援策」の3部から構成されています。それぞれの概要は次の通りです。










なぜガイドラインが必要となるのか、その背景とともに、ガイドラインの内容を実行することで期待されるメリット、効果が書かれています。
なお、現場で自律的・主体的な学び・学び直しが円滑に行われるためには、次の「学びのプロセス」を踏まえて進められることが望ましいとしています。


職務に必要な能力・スキル等を可能な限り明確化し、学びの目標を関係者で共有すること

職務に必要な能力・スキルを習得するための効果的な教育訓練プログラムや教育訓練機会の確保

労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを後押しするための伴走的な支援策の展開


使









「学びのプロセス」を踏まえて、労働者と企業が具体的に取り組むべき事項について、その考え方や留意点、推奨される取り組み事例等が紹介されています。

学び・学び直しに関する基本認識の共有

能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の共有

労働者の自律的・主体的な学び・学び直しの機会の確保

労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促進するための支援

持続的なキャリア形成につながる学びの実践、評価

現場のリーダーの役割、企業によるリーダーへの支援







厚生労働省のものにとどまらず、広く公的な支援策が掲げられています。
なお、ガイドラインには『別冊』があり、ここではさまざまな公的支援や具体的な企業事例が詳細に紹介されています。


2.ガイドラインの活用方法

実際に、どのようにガイドラインを活用していくかを考えてみましょう。


①まずは『別冊』を読んでみる

ガイドラインには『別冊』が付随しており、具体的な取り組み事例が掲載されています。自社での取り組みを検討するにあたっては、まずはこの『別冊』を読み、自社に合った取り組みを探してみるとよいでしょう。


複数のケースからいくつかを抽出し、自社でできそうなものを組み合わせてみるのもよいと思います。


②とりあえず真似てみる

模範となるようなケースが見つかれば、それを参考にしてみることになりますが、まずは何もアレンジせずにそのまま真似てみる、というのも方法の1つです。


何はさておき実行してみることは、「急速かつ広範な経済・社会環境の変化に対応」するうえでも重要な行動様式ではないか、と考えます。


③修正する

真似てみた取り組みが自社にとって最適であったのなら、それを継続すればよいことになりますが、課題が見つかったり、思うように進まなかったりすることもあるでしょう。


そのときは、何がボトルネックとなっているのか、どうすればハードルをクリアできるかを検証することになります。


ここで重要なのは、「自社に合っているか」ということはもちろんですが、ガイドラインの「Ⅰ 基本的な考え方」にあるように、次のような観点からチェックすることです。


・「立場に応じた役割」が果たせているか
・「学びのプロセス」に滞りがないか
・「学びの好循環」が生まれ、学びの気運が高まっているか


④再度実行する

検証が済んだら、再度、実行に移ります。


そして、これらの運用を繰り返すことによって、自社の取り組みをブラッシュアップしていくことが重要になります。




3.自律的・主体的に

ガイドラインのなかで繰り返し出てくるのが、「自律的・主体的」という言葉です。


強制して学ばせるのではなく、労働者が進んで学びができるように「いざなう」仕組みづくりが企業には求められる、ということをガイドラインは述べているといえます。


そのためには、取り組みの起案から実行までをどこかのセクションに一任するのではなく、社内横断的なプロジェクトチームを立ち上げて実施してみるとよいでしょう。実際に学ぶ者が、自ら創り上げた取り組みであれば、自社独自のアクションプランができ上がってくるはずです。


また、このような取り組みを通じ、企業が労働者に対して学び・学び直しの機会を提供することは、労働者のエンゲージメント向上にもつながり、組織全体にとってもよい効果が見込めるものと思われます。



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