一口メモ 100年の香り

朝礼時の挨拶や、経営のヒントにーー。日常の光景や歴史のエピソード、季節の話題等さまざまなトピックスを題材にまとめたミニコラムです。



 「働く女」の先駆者ココ・シャネルは、大戦間の1920年代にファッションデザイナー、事業家としてのステイタスを確かなものとした。その決定打となったのが、今から100年前の1921年5月5日に発売された「シャネルN°5」だった。


 それまでの香水が原料に大量の花を使用する、ごく限られた人たちのためのものだったのに対し、シャネルは化学合成されたアルデヒドにジャスミンやバラなど80種類もの成分を調合することで、新時代の女性のための新しい香りを創造した。それは後に「ベッドでは何を着る?」と問われたM・モンローが、「シャネルN°5を数滴」と答えたほどに世界を席巻した。


 「シンプルで着心地がよく、無駄がない」ことを目指し、動きやすい素材としてジャージーを女性服に取り入れてコルセットから女性を解放したシャネルは、同時に、自立した女性の清潔なエレガンスを香水で表現したのである。


 男社会に伍して「仕事には、お金よりもずっと強い味わいがある」と言ったシャネル。彼女が創造した「N°5」は、香水の定番として、この100年ずっと香り続けている。


〇「一口メモ」2021年5月号

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