ファシリテーションとは? ファシリテーターの役割と必要なスキルを解説

社内コミュニケーションの改善と向上は、社内業務の効率性向上や顧客満足度の向上、企業ブランドの価値向上など、企業に多くの利益をもたらすことはよく知られています。それは、社内コミュニケーションが活発に行われることによって、目標や課題に向かって、意見を持つ他者とぶつかりながら相互理解をくりかえし、新たな考えを共有していくことが出来るようになるからです。しかし、社内コミュニケーションが活発に行われるべき実際の会議の場を見ると、強い言葉でひたすら正当性を主張する人がいたり、本当は意見があるのに遠慮して発言できないという人もいるでしょう。また、参加者が複数の部署にまたがる場合、それぞれの部署間の事情を優先するため意見がまとまらなかったり、関わりたくないと考え消極的で発言がなく、会議が全く進まないということも多いのではないでしょうか? そんな時に役立つのが「ファシリテーション」です。

1.ファシリテーションとは

ファシリテーション(facilitation)とは、楽にする、促進する、容易にするという意味のfacilitateから転じて、対立しがちで合意形成や相互理解が妨げられがちなチーム・組織などを効果的・効率的に運営することを指す言葉として、広く知られるようになってきました。

 

最近は、会議を円滑に進め、成果が上げられるように、 「段取り」「進行」「支援」をするという狭義の意味で使われることが一般的ですが、会議だけでは無く、集団(チーム・組織)で問題解決を行っていくための重要なスキルです。

 

本コラムでは、ファシリテーションを「参加者の協力を促し、全員が納得して結論を導くための支援をすること」と定義をして、主に会議のシーンでの議論を進めていきたいと思います。

 

2.会議の問題点

(1)ムダな会議

2018年にパーソル総合研究所が立教大学・中原淳教授と共に、長時間労働についての大規模調査結果を公表されていますので、その調査結果から会議にまつわる分析をご紹介します。出所:パーソル総合研究所・中原淳(2017-8)「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」

 

この調査では、メンバー層で年間154時間、部長級では434時間を超える会議に参加していることが分かりました。そして、従業員規模が多いほど、部長級の会議時間は飛躍的に伸び、1万人を超える大企業になると、630時間にも及びます。

一方、ムダだと感じる会議の割合についての調査結果は、メンバー層で23.3%、上司層では平均27.5%の会議が「ムダな会議」だと感じているようです。

 

では、「ムダな会議」と感じるのはどのようなときかというと、最も強く影響していたのは、「会議が終わっても何も決まっていない」「終了時刻が延びる」「些細な議題で会議を開く」といった始め方・終わり方に関わる会議のあり方とのことです。

 

(2)「ムダな会議」で起こりがちな事象

きっと、皆さんも経験されている思いますが、ムダだと感じる会議で起こりがちな事象の代表的なものをいくつか上げてみたいと思います。

 

ⅰ)いつも同じ人が話をしている(上司だけがしゃべっている場合も)。

ⅱ)意見が活発に出ない。

ⅲ)本音が言えない。

ⅳ)どうでも良いことばかりが議論されている(最初から結論が決まっていた)。

ⅴ)会議で決まったことが実行に繋がらない。

 

(3)会議のあるべき姿とファシリテーション

「ムダな会議」が改善された、会議のあるべき姿どのようなものでしょうか。

 

ⅰ)何のための会議か、目的が明確である。

ⅱ)会議の目的に沿った関係者が集められ、会議の目的が事前に知らされている。

ⅲ)限られた時間内で進行されている。

ⅳ)意見交換が双方向であり、さらに多方面である。

ⅴ)役職に関わらず発言ができる。

ⅵ)違った意見が出てもお互いに尊重する。

ⅶ)活発で楽しく、終わった後にやる気が出る。

ⅷ)会議の参加者全員が決定事項に責任を持つ。

ⅸ)決まったことが全員で実行される。


以上が、会議のあるべき姿です。

 

そして、それを実現するキーワードが「ファシリテーション」なのです。ムダな会議をあるべき姿にするのは、ファシリテーションの実行役である「ファシリテーター」の役割が大きく、これから詳細にお話ししていきたいと思います。

 

しかし、参加メンバーがファシリテーションマインドを持つ必要性があることも覚えておいてください。 

3.ファシリテーションが注目される理由

(1)注目される2つの理由

近年、管理職やリーダー向けの研修でファシリテーションスキルを学ぶ機会を設けたり、ファシリテーターの養成を行う企業が増加していますが、その理由は大きく分けて2つあります

 

①意思決定の質とスピードが求められる。

いわゆるVUCAの時代と言われる、ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況の中では、過去の成功事例に基づく固定概念に縛られないフレキシブルでイノベーティブな意思決定と変化に対応するスピードが求められています。

  

②意思決定の見える化とステークホルダーの多様性への対応が求められる。

意思決定の具体的実行には、メンバーの高い納得感が必要ですが、そのために意思決定のプロセス自体が、合理的に行われなければなりません。

 

また、顧客のニーズが多様化していることに加え、メンバーの業務や雇用形態などから、価値観も様々なものになっており、透明性と納得感の高い意思決定プロセスが求められています。

 

但し、決して、メンバーの意見を平均化した妥協案を作ることを目的とするわけでは無く、少数意見やエッジの効いた(切れ味の鋭い・先鋭的な)意見が自由に発表され、多数派と対等に議論できるような環境を整えることで、会議後の実効性を担保することが必要です。

4.ファシリテーターとは、

「ファシリテーター」とは、ファシリテーションを実践する人のことを言います。よくある誤解は、単なる会議の司会進行役をファシリテーターと認識してしまうことです。

 

司会進行役との大きな違いは、ファシリテーターは、会議の進行以外に、参加者の意見を幅広く集め、整理したり、まとめたり、時には考えるヒントを与えたりすることです。

 

『ファシリテーター型リーダー時代』の著者であるフラン・リース氏は、ファシリテーターの定義を「メンバーの参加を促しながら、グループを導き、グループの作業を容易にする人のこと」としていますが、これに「チームメンバー全員を共通の目標に向かわせること」をつけ加えることで、一層ファシリテーターの役割が明確になると思います。

 

(1)ファシリテーターの役割

先程のファシリテーターの定義に沿って、ファシリテーターの役割をもう少し具体的に説明していきたいと思います。

 

①メンバー全員を共通の目標に向かわせる

—「人間は意味を求める存在である」—オーストリアの精神科医であり、『夜と霧』の作者としても有名なヴィクトール・フランクルは、人間は自分の生活をできる限り意味で満たしたいという欲求をもち、それに基づいて生きがいのある生活を手に入れようと格闘するのだと言いました。

 

意味がわからないことはやりたくないというのは人して当然のことと言えます。

 

したがって、ファシリテーターの第一の役割は、「会議の目的は何なのか」「会議をすることでどのような目標を達成し」「どのような成果を出したいのか」「なぜ、メンバーとして招集されたのか」について、ファシリテーター自身の言葉で伝え、主旨を共有し、それぞれに納得させることです。

 

②中立な立場であること

純粋に中立な立場で会議に参加するケースは、まずありません。ここで言う中立な立場とは、意見が対立する局面においては、メンバーを納得・説得させるために、公平な立場から議論をまとめるマインドセットです。 

 

③プロセスを管理する

プロセスを管理するとは、会議の開催から合意に至るまでのプロセスを管理することです。具体的には、「議論の内容(contents)」「議論の道順(way)」「参加者(member)」「時間(time)」の4つを管理することになります。

 

1)議論の内容(contents)  議論の『出発点』と『到達点』明確にする

会議の目的に納得感が醸成されていない場合、「そもそも○○より××はどうなっているんだ」と議論が逸れてしまったり、枝葉末節な議論の応酬が繰り返されるというようなことが起こってしまいます。

その場合、ファシリテーターは、「今、何を議論すべきなのか」「何をゴールとしているのか」を意識し、議論の方向性を修正しなければなりません。

 

2)議論の道順(way)    議論すべき論点を洗い出し、絞り、深める

立場が異なるメンバーが参加している会議では、議論の前提や背景が食い違ったままで、解決策を議論しようとしても合意に至るのは難しくなります。

 

何らかの解決策がゴールであれば、「現状の把握」「問題点のあぶり出し」など一つひとつ議論を積み上げることではじめてゴールに至るのです。

 

会議が紛糾する一番大きな原因とも言えますので、会議の冒頭でアジェンダを説明して、全員の合意を得てから進めるようにします。

 

3)参加者(member)の管理    参加者の把握と納得性の醸成

参加者の管理は、大きく3つに分けられます。

 

○会議参加者の選定

参加者が多いほど議論は豊かになる可能性は高まりますが、一方、合意には困難さが増すこと考えられます。また、利害関係者を洩らすと、決定事項の実行の妨げとなる場合もありますので、「多様性と実効性を考慮した最小限」のメンバーの選定が原則となります。

 

○全員の発言を促す

「会議に参加して発言しないのはその人が悪い」というのが、一般的考え方ですが、ファシリテーションの考え方は異なり、発言の機会を与えないファシリテーターの責任が問われると考えてください。

 

○参加者の認識レベルを把握する

これも会議が紛糾する大きな原因です。最も問題なのは、よく分かっていないので議論が進まない・対立や混乱が生じることです。この場合、ファシリテーターは議論の前提となる情報を整理し、伝える必要があります。 

 

4)時間(time) タイムマネジメント

「ムダな会議」で説明したとおり、決められた時間内で終わらないことが多いのが実情です。ファシリテーターは、会議全体の時間配分を事前に計画し、進行する必要があります。当然、想定通りに進行することばかりではないでしょうが、一定の発言ルール(一人3分程度等)を予め伝えておくことで、スムーズな運営は行えます。

5.ファシリテーションスキル

それでは、ファシリテーターに必要なスキルについてお話していきます。

 

(1)発言を引き出し理解する対人関係スキル

傾聴スキル

ファシリテーターは、参加者の多面的な考え方を引き出す必要があります。そのために身につけたいのが傾聴(アクティブ・リスニング)スキルです。ⅰ)うなずき ⅱ)相づち ⅲ)オウム返しなどがありますが、大切なのは中立な立場で発言をしっかり受け止め共感することです。「受け入れられた」という安心感は、自分の考えを伝えていこうという気にさせ議論に広がりが生まれます。

 

質問のスキル

意見を引き出すために必要なもう一つのスキルが「質問のスキル」です。ファシリテーターは、発言内容の中から、「何のために(目的)」「何について(論点)」「何を(主張と根拠)」をつかみ取ることが必要です。 質問を通して、その三つを明確にすると共に参加者と共有することで、発言の理解が深まります。特に、根拠については、合理的な議論を方向付ける重要な要因となりますので、不明瞭な場合や省略される場合もありますので、適切な質問により明確にすることが必要です。

 

質問には、大きく二つの種類があります。

 

クローズド・クエスチョンはYesかNoで答えることができる質問で、事実関係や相手の意思を確認するときに有効です。

 

オープン・クエスチョンは、相手が自由に答えることができる質問で、話を広げたり発展させるときに有効です。

 

この二つをどちらか一方だけ使い続けると詰問状態になったり、行き詰まることになりやすく、両方をバランス良く使うことで効果的な会話をすることができます。

 

A:あなたはB社の新商品に対してどのような対応方法があると考えていますか?(オープン・クエスチョン)

B:当社の売れ筋商品は十分に優位性がありますので、その点をセールスポイントとして強調した営業を行いたいと思います

A:それで、対応策は万全だと思いますか?(クローズド・クエスチョン)

B:これだけでは、十分とは言えませんので、別の方策も検討するつもりです。

 

この会話は、オープン・クエスチョン+クローズド・クエスチョンを組み合わせています。オープン・クエスチョンで相手の考えを引き出し、クローズド・クエスチョンで考えに対して確認を行っています。その他にも、組み合わせにより、異なる効果を生じさせることができます。 

 

(2)議論を深める論理的思考

会議の場で上手く話すことは難しいものです。発言者全員が「何のために(目的)」「何について(論点)」「何を(主張と根拠)」を整理して話してくれれば良いのですが、何かが抜け落ちたり、弱かったりといったことがよく起こります。

 

そのような場合に必要となるのが、論理的思考によるファシリテーターのサポートです。 いくつかのフレームワークを身につけておき、発言内容や議論の進み方に当てはめていくことで、議論の深化が促進されると共に参加者の理解が深まります。

 

論理的思考について、詳しくは別の機会にお話しさせて頂くことにして、代表的なものを一つご紹介しておきます。

 

ピラミッドストラクチャー

意見や情報などから上位概念を抽出するアプローチで、会議の場では、「主張」を「根拠」が支える構図となります。

 

売上増強策について議論する場合、

 

売上=受注件数×平均単価 では、売上の結果は受注件数と平均単価が、根拠となり、売上という主張を支え、

 

売上=往訪件数×実面率×受注率×(正価×値引き率)では、受注件数は往訪件数・実面率・受注率が根拠となり、平均単価は正価・値引き率が根拠となり、それぞれの主張を支えることとなります。



 

発言内容の結論が不明確な場合は、根拠から主張にSo what?(だから何?)、根拠が不明な場合は、主張から根拠にWhy so?(なぜそう言えるのか・本当にそうなのか・他にも理由は無いのか)で質問を行い、意見を確認していきます。  



(3)合意を促すスキル

会議の合意を妨げる大きな要因に、発言が長すぎて主張と根拠が不明瞭になる場合や意見が対立して発言の応酬になる場合があります。こうした場合には、要約のスキルが役立ちます。

 

要約のスキル

ⅰ)長い発言を要約する

発言が長くなると、聞き手の意識は分散し、発言内容の理解が聞き手によってバラバラになってしまうことがあります。そのような場合、ファシリテーターは、主張と根拠についての要約をすることで、主張の確認と、参加者の理解を行い合意を促します。

 

ⅱ)対立する意見を要約する

意見が対立した場合に、発言の応酬が始まり、議論が進まなくなる場合があります。意見が対立する原因には、以下のようなものがあります。

・接する情報の相違 (見ている数字が違う ex.売上額か利益率か)

・情報の解釈(数字は正直でも見方は違う ex.実額か伸び率か)

・判断基準(目指す数字・姿が違う ex.売上増か利益率の改善か、短期か長期) 

 

こういった場合には、情報格差を無くす相手の立場に立ち解釈の多様性を理解する相違する判断基準の上位の目的を考える⇒共有された上位目的に基づいて再度検討するというプロセスを踏む必要があります。

 

したがって、ファシリテーターは双方の意見を要約し、相違点を確認した上で、上位目的を問いかけます。

 

また、ゴール案が対立している場合、それぞれが主張する案のメリット・デメリットを参加者で議論するのも一手です。

 

(4)タイムマネジメントと会議をまとめるスキル

会議の終了時間が近づいた時間帯で、ファシリテーターは会議の総括を行います。議論の進捗状況は大きく二つに分かれますが、どちらであっても、参加者が「ムダな会議」であったかどうかを判断することになりますので、しっかりと行うことが重要です。

 

①十分な議論ができ、合意が形成された場合

ファシリテーターは、ここまでどういった論点で議論がなされ、どのような合意が得られたのか「論点と合意内容」をセットで要約し、参加者に確認を行います。

 

又、合意内容については、5W1Hを意識して明確な行動計画を示し、参加者の行動を促しましょう。

 

②議論がまとまらない場合

会議予定時間内に完全合意が得られるのがベストですが、そうならない場合には、多数決や上席者が議論を踏まえて判断するというケースが、現実的には多いかもしれません。

 

この場合、議論は一体何だったのかという虚しさが残り、意見が採用されなかった側のモチベーションを低下させる恐れがあります。

 

今回の会議で、結論を出す必要がある場合には、予め最終の決定方法を知らせておき、事前に了承を得ておくことが必要です。

 

又、議論を次回の会議に継続出来るのであれば、合意するためにどのような条件や情報が必要であるかを明確にし、次回までに条件や情報を満たす行動を行うようします。

6.最後に

ファシリテーションは、参加者の合理性と感情という大きく異なる特性に働きかけ合意形成促進する極めて実践的なサポート活動です。

 

ファシリテーターの言動が、会議の場の空気に強い影響を与え、参加者の「ポジティブ」「ネガティブ」「無関心」という状態を変化させる可能性もあります。

 

ファシリテーターの役割で最も重要なものは、「メンバー全員を共通の目標に向わせる」ことです。意見の対立を恐れず、「対立」「多様性の理解と承認」から「合意」「変革」へ向かって頂きたいと思います。


 

プロフィール

SMBCコンサルティング株式会社 ソリューション開発部 教育事業グループ

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