Netpress 第2179号 社員教育に役立つ! 「エドテック(EdTech)」をどう使えばよいのか?
1.公教育にとどまらず、企業研修、リカレント教育、個人の学びも含めて、エドテックが広がりつつあります。
2.エドテックでは、自社の教育目的・ゴール、リソース、予算に合ったシステム・ツールの選定が重要です。
株式会社JBMコンサルタント
代表取締役社長 谷田 良純
1.エドテックとは
エドテック(EdTech)は、「教育(Education)」と「テクノロジー(Technology)」を掛け合わせた造語で、教育業界にテクノロジーの力を採り入れることで、学習のあり方にイノベーションをもたらしています。
日本でエドテックが注目されるきっかけとなったのは、学校教育の分野です。コロナ禍による休校時にエドテックが広まったことで、「一斉授業の限界」「教員の負担増」「家計や地域による教育格差」といった学校教育の課題が解決されつつあります。
これは企業においても同様で、「階層による統一的な研修が困難」「多くの業務を行う人事部の負担増」「企業規模などによる教育格差・リカレント教育の不足」といった課題を解決するために、エドテックを活用する場面が増えています。
2.エドテックで何ができるのか
エドテックによってできることは、「オンライン学習」「学習管理」「アダプティブラーニング」の3つです。
(1)オンライン学習
オンライン学習には、主に次の形式があります。
①オンラインによるライブ講義(オンライン研修) ②教育動画によるeラーニング ③グループウェアやSNSを活用した意見交換・ディスカッション ④LMS(ラーニングマネジメントシステム)を活用したテキスト学習・テスト |
オンライン学習は、インターネット環境と動画を受信する端末があれば簡単に利用することができ、場所の確保や交通費、移動時間も不要といったメリットがあります。
また、最近ではいくつかの学習形式を組み合わせた「ブレンディッドラーニング」という方法も注目されています。「対面研修×eラーニング」「対面研修×オンライン研修」などが代表例です。知識の習得はeラーニングで行い、スキルの習得は対面研修で実践するといったように、それぞれの特性を活かすことで高い教育効果が見込めます。
(2)学習管理
教育効果を最大化させるためには、学習状況を把握し、効率よく管理する仕組みが必要です。このような学習管理も、エドテックの得意とするところです。
特に、学習管理においてエドテックで先行しているのが、LMS(ラーニングマネジメントシステム)です。
LMSは、学習者の進捗状況を管理する、システム上でレジュメを配付する、テスト・アンケートを行う、といった機能を持つプラットフォームです。
テレワークの普及により、対面でのコミュニケーションが難しくなっている状況下でも、学習者の習得度や進捗状況などの情報を共有できるため、教育計画の設計や進捗管理がしやすくなるメリットがあります。
(3)アダプティブラーニング
従来の教育では、全員が1つのカリキュラムを統一的に学ぶことが一般的でした。しかし、当然のことながら、学習者の習得度や弱点などは各人で異なります。
アダプティブラーニング(適応型学習)は、学習者1人ひとりに最適化された学習内容を提供することで、より効率的・効果的な学びを実現する学習方法です。
学習者の習得度に応じて指導方法を変えることは、従来の教育方法でも行われていましたが、それは教育提供者の経験と感覚に基づくものでした。
アダプティブラーニングでは、個々の学習進捗やテスト結果などを蓄積・分析し、学習者の習得・理解の程度を可視化することで、各人の習得・理解の程度に合わせた学習内容が自動で抽出されます。
そのため、教育提供者から一方的に提供される統一的な学習ではなく、学習者各人の状況に合わせてカスタマイズされた教育を実現することができます。
すでに、さまざまな企業がアダプティブラーニングサービスを提供しています。一例として、社員教育における教材では、「Core Learn」「Cerego」「Knewton」などがあります。
3.エドテック活用のポイント
前述のとおり、エドテックは公教育の現場にとどまらず、企業研修、リカレント教育、個人の学びも含めて、活用の幅が広がりつつあります。そこで、以下では、社員教育におけるエドテック活用のポイントを解説します。
(1)ブレンディッドラーニングの活用
オンライン学習を中心に、複数の学習形式を組み合わせるのがブレンディッドラーニングです。
たとえば、短時間で効率よく知識を定着させたい場合は、「eラーニング×対面研修」の組み合わせが推奨されます。eラーニングで知識を習得させたあと、対面研修で知識をアウトプットする流れを構築すれば、効率よく知識の定着を図ることができます。
身につけた知識やスキルをすぐに実践できるようにしたいなら、「eラーニング×対面研修×現場指導」がよいでしょう。eラーニングの事前学習で基本知識を身につけ、対面研修で理解度を確認し、さらにeラーニングの事後学習と現場指導を行うことで、従業員のマインドや行動変容を目指します。
オンライン学習でブレンディッドラーニングを実践する際は、目的を明確にしたうえで手法の組み合わせを考えるようすると、高い教育効果が期待できます。
(2)アダプティブラーニングの活用
日常業務で忙しい社員が、多岐にわたる知識を習得することは容易ではありません。まとまった学習時間が取りにくく、しかも知識の完全な習得を目指す必要がある場合には、アダプティブラーニングが非常に有効です。
一方で、アダプティブラーニングは、導入コストや人件費がかかるといったデメリットもあります。対策として、費用を抑えて活用できるオンライン学習と、学習管理の機能を持ったLMSのeラーニングシステムを活用して、アダプティブラーニングの要素を採り入れる方法もあります。
エドテックを実現するシステム・ツールは多岐にわたるため、自社の教育目的・ゴール、リソース、予算に合ったものを選定するようにしましょう。
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