4月から適用 「消費税の総額表示」が再び義務化されました!

■POINT
1.4月から「○○円+消費税」や「○○円(税抜)」といった価格表示が認められなくなっています。
2.ここでは、特別措置法の失効により再び義務付けられた消費税の総額表示について解説します。


税理士 脇田 弥輝


1.総額表示の義務付け
 店舗やチラシなどの商品やサービスの金額の表示については、消費税の金額を含めた総支払額がひと目でわかるようにするため、2004年4月から「総額表示」が義務付けられています。
消費税を含まない税抜の価格表示の場合、買う側(=消費者)は、消費税によって「いくら支払えばよいのか」ということがわかりにくくなってしまいます。そのため、総額表示が義務付けられました。
 ただし、消費税が5%から8%、さらに10%へと引き上げられることに伴い、短期間に何度も値札やチラシ、ホームページなどの金額の表示を変えることは、実務上、事業者にとって大きな負担となります。そこで、2013年10月1日から2021年3月31日まで、「消費税転嫁対策特別措置法」によって、総額表示をしなくてもよいという特例がありました。つまり、「〇〇円+消費税」や「〇〇円(税抜)」といった表示が認められていました。
 この特例が、ことし3月31日で失効し、4月からは「〇〇円+消費税」や「〇〇円(税抜)」といった表示が認められなくなりました。再び、消費税を含めた総額表示が義務付けられることになったのです。


2.具体的な価格表示の方法
 総額表示には、次のような方法があります(標準税率10%を適用する場合)。


 ポイントは、支払総額の「1,100円」が明確に表示されているかどうかです。税込価格が明示されていれば、「税抜価格」「消費税額等」が表示されていても構いません。
 Aの「1,100円」のように、金額のみ表示したものは、税込価格ということになります。また、Fの「1,000円(税込価格1,100円)」についても、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されているので、「総額表示」に該当します。ただし、税込価格の文字を小さくするなど、税抜価格を強調するような表示は問題となる可能性があります。


3.対象は不特定多数の消費者に対するもの

 総額表示の義務付けについては、それがどのような表示媒体によるものかを問いません。財務省は、総額表示の義務の対象として、次のものを例示しています。


 総額表示の義務の対象となるのは、不特定かつ多数の消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が、あらかじめ価格を表示する場合」です。
 そのため、次の4つのケースは、総額表示の義務の対象とはなりません。
(1) 免税事業者の場合
 免税事業者は、取引に課される税がないので、そもそも「税抜価格」を表示して別途消費税を受け取ることが消費税の仕組み上、予定されていません。免税事業者で消費税を受け取る事業者も多くありますが、その場合は総額表示の義務の対象ではありません。
(2) 事業者間の取引
 事業者間の取引は、総額表示の義務の対象となりません。事業者間でのやり取りでは、消費者保護を考える必要がないため、総額表示も不要とされています。
 したがって、見積書、契約書、請求書などの事業者間でのやり取りの表示は、これまでどおりで構いません。
(3) 価格表示を行っていない場合、口頭による場合
 総額表示の義務付けは、価格表示を行う場合を対象としており、価格表示を行っていない場合について、表示を強制するものではありません。さらに、口頭によるものも総額表示の義務の対象とはなりません。
(4) 請求書・領収書など
 総額表示が義務付けられるのは、「あらかじめ価格を表示する場合」です。
 見積書は、商品を販売する前に発行するため、「あらかじめ価格を表示する場合」に当たりますが、「不特定かつ多数に」ではないので、総額表示の義務の対象となりません。また、商品の販売後に発行する請求書や領収書は、取引後のものなので、総額表示の義務の対象外となります。
 つまり、総額表示は、「これからいくら支払えばよいのか、一般消費者がひと目でわかるようにするためのもの」と理解しておけばよいでしょう。


4.軽減税率と標準税率の両方が適用される場合
 軽減税率制度の実施に伴い、たとえばレストランで、店内飲食とテイクアウトがある場合は、同一のメニューの販売について、適用される消費税率が異なることがあります。
 このような場合の価格表示については、次のような方法があります。
 ①テイクアウトと店内飲食の両方の税込価格を表示する
 ②店内飲食とテイクアウトで価格が異なる旨の店内掲示を行うことを前提に、どちらか一方のみの税込価格を表示する
 ③テイクアウトと店内飲食を同一の税込価格で表示する
 いずれの場合でも、税込価格を表示する必要があることに注意してください。


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