Netpress 第2535号 160万円から178万円へ! 「年収の壁」の変化と源泉所得税の実務対応
1.2026年度税制改正では、年収の壁が178万円となり、所得要件や非課税限度額の変更などもあります。
2.ここでは、源泉所得税の徴収事務に関係のある改正内容を中心に、実務対応と注意ポイントを確認します。
1.年収の壁の変化とその影響
所得税におけるいわゆる「年収の壁」は、長年にわたり「103万円の壁」として定着していましたが、2025年度税制改正による160万円への引き上げを経て、2026年度税制改正(以下、「本改正」とします)により「178万円」(給与収入のみの場合)となりました。
この変更に伴い、扶養親族等や大学生年代それぞれの所得控除を受けられるライン(壁)も引き上げられました。
注意すべきは、これらの引き上げが2026年分・2027年分における特例を含む水準だという点です。この部分について、2028年分以降は特例部分の控除額がゼロになるか、減少することになります。
また、本改正による水準(壁)の引き上げは、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以降の所得税について適用されます。このため、2026年12月に行う年末調整など、2026年12月1日以後の源泉徴収事務に変更が生じます(2026年11月までの源泉徴収事務に変更はありません)。
なお、各種所得控除については、年収以外の要件も細かく定められていますので、詳細は国税庁ホームページの「タックスアンサー」などで確認してください。
2.2026年の源泉所得税の実務ポイント
2026年の実務において、最も注意を要するのが源泉所得税の取り扱いです。
以下、給与計算や年末調整事務においてミスを防ぐために押さえておきたいポイントを整理します。
(1) 1月からの源泉徴収税額表の変更
2026年1月1日以後に支払う給与等から、新たな「給与所得の源泉徴収税額表(月額表・日額表)」が適用されています。従来の源泉徴収税額表よりも源泉徴収する税額が減少しているため、同じ給与水準であれば、従業員にとっては手取りが増加することになります。
なお、この源泉徴収税額表の変更は、2025年度税制改正(「160万円の壁」への引き上げ)の適用によるものです。そのため、本改正(「178万円の壁」への引き上げ)によって、2027年1月1日以後に支払う給与等からは、さらに新しい源泉徴収税額表が適用されることになります。
(2) 4月からの非課税限度額の変更
本改正では、「178万円の壁」への引き上げに加えて、通勤手当や食事補助の非課税限度額も変更されました。
これらの変更は、2026年4月1日以後に支払われたものから適用されます。
① 通勤手当の非課税限度額の変更
自動車や自転車などの交通用具を使用する場合の通勤手当について、通勤距離が片道65㎞以上の1か月当たりの非課税限度額が次のとおり引き上げられました。
| 改正前 | 改正後 |
| 片道55km以上:38,700円 | 片道55km以上65km未満:38,700円 |
| 片道65km以上75km未満:45,700円 | |
| 片道75km以上85km未満:52,700円 | |
| 片道85km以上95km未満:59,600円 | |
| 片道95km以上:66,400円 |
また、一定の要件を満たす駐車場等を利用した場合、距離区分に応じた非課税限度額に、月額5,000円(税込み)を上限として駐車場代相当額を上乗せできるようになりました。
注意が必要なのは、4月1日より前の期間に対する通勤手当の差額を、4月以降に遡及して追加支給するケースです。この追加支給には、新しい非課税限度額は適用されません。
② 食事補助に係る非課税限度額の引き上げ
使用者からの食事の現物支給(食事補助)に係る所得税の非課税限度額が、月額7,500円(改正前:月額3,500円)に引き上げられました。
これにより、企業はこれまで以上に手厚い食事補助を税負担なしで役員や従業員に提供できるようになりました。
非課税になる要件は、役員や従業員が提供される食事の価額の50%以上を負担していることと、企業が負担する金額(「食事の価額」−「役員や従業員の負担額」)が月額7,500円以下(税抜き)であることです。
(3) 年末調整の注意点と実務対応
ことしの年末調整は178万円対応に加えて、扶養親族等の要件の見直しや特定親族特別控除の確認があるため、実務担当者にとっては前年と同じく煩雑な作業となります。
特に年の途中で就業時間や勤務日数が増えた従業員とその家族については、当初の見積額と年末時点の実績額が大きく異なる可能性があります。これにより、扶養控除等申告書などの記載内容と実際の適用関係が食い違ってしまうケースも考えられます。
したがって、申告書を回収して機械的に処理するのではなく、前年以上に個別確認を意識した対応が重要です。
あわせて、給与計算ソフトや年末調整システムについても、自動アップデートを過信しすぎず、改正後の控除額や税額表が正しく反映されているかを確認しておくことが、ミス防止の観点から求められます。
(4) 所得税徴収高計算書(納付書)様式の変更
税制改正そのものとの直接の関係はありませんが、2026年9月に国税庁のシステムの更改がありました(国税総合管理システムKSKから次世代のKSK2への移行)。
これに伴い、源泉徴収事務関連では、次のように実務上大きな変化が生じることになります。
① 書類様式の大規模な刷新(原則として白黒化、1,700超の申告書・届出書等が対象)
② 納付書の仕様変更(番号体系や用紙サイズ、記載項目の見直し)
特に、源泉徴収事務においては、②の納付書の様式変更の影響が大きい点に注意が必要です。
なお、従来の複写式納付書も2028年9月頃までは使用できる予定ですので、慌てて廃棄する必要はありません。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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