Netpress 第2525号 “あるある”の状態に陥っていませんか? 怖い・笑える、 でも大切な人事評価制度
1.評価制度の「本来の意味」と「現実のあるある」を対比して、その本質を問います。
2.なぜ、会社は社員を評価するのか、評価に差をつけて、良いことはあるのか、改めて考えましょう。
3.ここでは、評価制度のテコ入れのきっかけになるよう、人事評価制度について解説をしました。
なぜ、会社は社員を評価するのでしょうか。何十時間もかけて、社員の不満を増殖することになっていないでしょうか。評価に差をつけて、良いことはあるのでしょうか。考えさせられることがよくあります。
本稿では、拙著『禁断の会社用語辞典』(日経BP)より、評価制度にまつわる“あるある”を抜粋しています。解説も合わせてご覧いただくことで、皆様の会社の評価制度のテコ入れのきっかけにしていただけたら幸いです。
1.「人事評価」
人事評価の本来の意味は、「期末に、各社員の仕事の成果やプロセスの実施状況、発揮された能力などを評価して、記号や点数をつけること」です。
しかし、現実には、こんなことが起こっています。
- 管理職は、「自分は評価する側の、選ばれた、特別な人間だ」と錯覚する
- 管理職は、自らの指導力の欠如を、部下の仕事力の低さのせいにするチャンス
- 管理職がどういう評価をつけても、結局、多くの社員のモチベーションは下がる
≪解説≫
記号や点数をつけることを目的化させないことが重要です。思い切って、処遇への反映をいったんストップし、評価の質を高めることに集中するのも一考に値します。2、3年、評価制度そのものに向き合うことに徹底するのです。くれぐれも、評価制度を運用することそのものをゴールにしないことが肝要です。
2.「人事評価会議/評価調整会議」
この会議の本来の意味は、「複数の管理職が集まり、各部門でつけた評価の妥当性検証を行う場」です。
しかし、現実には、こんなことが起こっています。
- 出席すると、偉くなった気分になる
- リモートで行われることも増え、誰が聞いているかわからない
- 数時間どころか、何十時間、何百時間も費やしている会社がある
≪解説≫
人事評価会議での発言に、その会社の人材マネジメント力、人材を大切にする姿勢などが如実に表れます。
たとえば、「この場限りね」という合図とともに、「あいつは地アタマがよくない……」「家庭が……」「体育会系なので……」「性格が細かいので…」「ノリが悪いから……」など、とんでもない言葉が発せられることも決して珍しくありません。
しかも、仕事や能力を見るのではなく、性格やクセ、態度、やる気などについて評しながら、社員にレッテルを貼ってしまっているようなケースもあります。最近は、会議はすべて録音されており、筒抜けになっていることを忘れないようにしましょう。
3.メリハリのある評価
「メリハリのある評価」とは、本来「基準に従って成果や貢献度などを評価し、(評価)結果に適切な差をつけること」を意味します。
しかし、現実には、以下のような状況が見られます。
- 評価に差をつけると社員の不満の総量が増える、上司にとっての自己矛盾、ジレンマ
- 評価に差をつけるために、膨大な労力・工数・神経を使う、マネジメントが「仕事している気分」を味わうための年間最大のイベント
≪解説≫
評価結果が中心化してしまっている状況を解消し、メリハリをつけたい――。もっともらしい課題として多くの会社から聞く話です。しかし、評価に差をつけることにどのような意味があるのでしょうか。
XさんはA評価、YさんはB評価。果たして二人の成果や貢献度には、わざわざ違う評価をつけるほどの差があったのでしょうか。仮に差があったとして、その違いを説明しきれない(言語化できない)ならば、差をつける利点などあるのでしょうか。
また、評価者の評価能力は果たして十分なのか、と社員に疑問に感じさせてしまうことも少なくありません。
いっそ、評価記号は3段階ぐらいにしておき、特筆すべき人のみを加点(特別に結果の悪い人のみを減点)する程度でよいかもしれません。安易に聞こえの良いフレーズである「メリハリのある評価」に飛びつかず、冷静に運用の費用対効果を考えることをお勧めしたいです。
4.評価の中心化
評価の中心化とは、本来「評価の段階(A、B、Cなど)を決める際に、中央(中心)の評価(たとえばB)に寄せてしまう現象」を意味します。
しかし、現実には、以下のような背景があるかもしれません。
- 評価能力の欠如の表れ(かもしれない)
- 目標設定が適切であることの表れ(かもしれない)
- 超過達成しようとしない社員のマインドの表れ(かもしれない)
≪解説≫
評価に段階を設けて、基準に沿って評価をつける仕組みにしている会社であれば、安易に評価が中心化してしまう状況は好ましくありません。
中長期的には、評価者の評価能力を上げたり、評価調整会議などでしっかり評価段階を見極めたり、細かくなりすぎている評価段階(7段階以上は細かすぎるだろう)を簡素化したりなど、対処をしていくべきです。
しかし、評価の中心化はすべて悪であるかのような検討の方向は好ましくなく、その解消を拙速に進めてはなりません。中心化するほうがむしろ適当なケースがあるためです。
評価者の評価能力が不十分、目標設定が曖昧、母集団がそれほど大きくない(50人以下等)など、組織が未成熟な状況にある場合、無理なメリハリは避け、はっきりと認識できる場合のみ、高い/低い評価をつけるといった運用をしたほうが好ましい場合もあるのです。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
この記事はPDF形式でダウンロードできます
SMBCコンサルティングでは、法律・税務会計・労務人事制度など、経営に関するお役立ち情報「Netpress」を毎週発信しています。A4サイズ2ページ程にまとめているので、ちょっとした空き時間にお読みいただけます。
本記事の基になった書籍『禁断の会社用語辞典』は、株式会社人的資本イノベーション研究所のホームページでもご紹介しておりますので、ご関心のある方はご覧ください。
https://hcinnovation.co.jp/lp/
プロフィール

SMBCコンサルティング株式会社 ソリューション開発部 経営相談グループ
SMBC経営懇話会の会員企業様向けに、「無料経営相談」をご提供しています。
法務・税務・経営などの様々な問題に、弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・コンサルタントや当社相談員がアドバイス。来社相談、電話相談のほか、オンラインによる相談にも対応致します。会員企業の社員の方であれば“どなたでも、何回でも”無料でご利用頂けます。
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/soudan








