Netpress 第2508号 “残忍な選別”の時代 取締役・執行役員がとるべき競争優位を築く経営戦略とは
1.急激な環境変化のなか、取締役・執行役員には迅速で柔軟な意思決定が求められます。
2.「サバイバル」と「サステナブル」の両立が、企業の持続的な成長のために不可欠です。
3.経営陣は過去の成功体験に依存せず、未来志向で積極的な変革を推進する必要があります。
1.激変するビジネス環境
近年、企業を取り巻くビジネス環境はかつてない速度で変化しています。
特にコロナ禍以降、社会や産業の構造は大きく変わり、従来の成功モデルが通用しないケースが増えてきました。デジタル化の急速な進展、AIの普及、地政学リスクの高まり、サプライチェーンの再編、人口減少社会の到来など、企業が直面する経営課題は複雑化しています。
コロナ禍の際、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「2年分のデジタル変革が2か月で起きた」と語りました。現在はそれ以上のスピードで社会や市場が変化しています。企業経営においては、昨日までの常識が今日には通用しないという状況が珍しくありません。このような時代において、企業の未来を担う取締役や執行役員には、これまで以上に迅速で柔軟な意思決定が求められています。
2.“残忍な選別”の時代
急激な環境変化は、企業間競争をさらに激化させています。その結果、市場は変化に適応できない企業を容赦なく淘汰する“残忍な選別”の様相を呈しています。
かつては、長い時間をかけて競争の優劣が決まることもありましたが、現在はわずかな期間のうちに市場の評価が定まり、企業の命運が大きく左右されるケースが増えています。
DXやAIの進展は、ビジネスのあり方を大きく変えました。小売業ではEC化が急速に進み、顧客は地域の店舗だけではなく世界中の企業から商品やサービスを選択するようになりました。つまり企業は、地域市場だけでなく「地球市場」での競争に直面していると言えます。
さらに、国際情勢の変化によるサプライチェーンの混乱、インバウンド需要の急減、資源価格の変動など、外部環境の影響も大きくなっています。これまで安定していたビジネスモデルが短期間で崩壊することも珍しいことではなくなってきました。
厳しさは、外部環境だけではありません。組織内部に目を向けても、従業員のあり方が大きく変化してきました。
昭和・平成・Z世代が同居する組織において、昭和型の労働観や価値観は、通用しなくなりました。転職市場花盛りのなか、入社3年以内に離職する若年層は後を絶たず、長期的な人材育成を難しいものにしています。
また、働き方改革の進展によって長時間労働に依存した組織運営は難しくなり、管理職の役割も変化しています。
従来の指示命令型のリーダーシップだけでは機能しないなか、現場レベルにおいても、これまで以上に高い戦略性と組織力が求められています。
3.「サバイバル」と「サステナブル」の両立
このような環境のなかで企業が生き抜き、さらに持続的に成長するためには、「サバイバル」と「サステナブル」を両立させた経営が不可欠です。短期的な競争に勝つことだけではなく、長期的に社会から必要とされる企業であり続けることが重要になります。
そのために経営陣が持つべき視点として、以下の五つが挙げられます。
① 環境変化を読み続ける力
第一は、「環境変化を読み続ける力」です。
市場、技術、社会の動きを常に分析し、自社にとってどのような機会やリスクがあるのかを先読みすることが重要です。経営者には、未来を洞察する視点と、戦略に落とし込む力が求められます。
② 迅速な戦略転換
第二は、「迅速な戦略転換」です。
過去の成功体験に固執すると、変化に対応できず競争から取り残されます。必要であれば既存事業の見直しや撤退、新たな事業領域への挑戦など、大胆な戦略転換を行う意思決定が求められます。
③ 人的資本の活用
第三は、「人的資本の活用」です。
企業にとって最大の経営資本は人材です。人材の力を最大限に引き出す経営は不可欠です。リスキリングによって新しい価値を生み出す人材を育成し、多様な人材が能力を発揮できる組織を構築することが重要です。
また、価値観の多様化が進むなかで、従業員ひとり一人のエンゲージメントを高めることは、企業の競争力の向上に直結します。
こと、人材に関しては、人事部門の仕事と解釈する経営幹部が少なくありませんが、企業にとっての最大の経営資本である以上、経営幹部の関与は必須です。
④ イノベーションを生み続ける組織づくり
第四は、「イノベーションを生み続ける組織づくり」です。
企業が衰退する最大の理由は、過去の成功体験への依存です。新しい価値を生み出し続ける企業文化を醸成し、挑戦を歓迎する組織風土をつくることが必要です。
⑤ 社会価値と経済価値の両立
第五は、「社会価値と経済価値の両立」です。
ESG経営やSDGsが重視される現代においては、企業は利益の追求だけではなく社会に対する価値創出も求められます。社会課題の解決に貢献する企業は、顧客や社会からの信頼を獲得し、結果としてブランド価値の向上や持続的な成長につながります。
4.未来志向の経営への転換
これからの企業経営において重要なのは、単に競争に勝つことではありません。激しい競争環境のなかでも生き残りながら、社会とともに持続的に成長する企業をつくることが求められます。そのためには、まず経営陣自身が過去の成功体験への依存から脱却し、未来志向の経営へと転換する必要があります。
変化を恐れず、環境の変化を機会として捉え、挑戦を続ける企業こそが、真の競争優位を築くことができます。“残忍な選別”の時代においても、社会から必要とされ続ける企業をつくること。それこそが、これからの経営者に求められる最も重要な使命と言えるでしょう。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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