SMBC経営懇話会 INSTRUCTOR’S VOICE 会社法やガバナンスに縛られ過ぎて企業活動が萎縮してはいけない/新任取締役・執行役員セミナー

PROFILE
葉玉匡美/Masami Hadama弁護士、TMI総合法律事務所 パートナー。1989年東京大学法学部卒業。1993年検事任官、2006年東京地方検察庁特捜部検事。2007年よりTMI総合法律事務所パートナー弁護士に就任。検事・会社法立案担当者の経歴を活かし、企業法務に関する分野で活躍する。『新・会社法100問』『Q&A 決算修正の実務詳解』ほか著書多数。
「まずは従業員と取締役では法的にまったく違う立場にいると認識しましょう。従業員は労働者として労働法で守られますが、組織を動かす側の取締役に労働法の適用はありません。仕事上の失敗をすれば、個人で法的責任を負うことがあるのです。実際に株主代表訴訟などで、善管注意義務違反として何十億円もの支払い命令が下ることも、しばしば起こります」
取締役就任は決して喜ぶばかりでなく、気を引き締めて臨まなくてはならないという。
「取締役になるということは、いったん会社を卒業し、新たに一人のプロフェッショナルとして会社経営を担うということ。誰の指示に従うのでもなく自身で決断しなければなりませんし、取締役同士の相互監視義務も負います。平取締役だろうと、ときには社長に身を退くよう直言しなければならないこともある。取締役として仕事をするのは、覚悟と勇気がいることなのです。とはいえ、会社法やガバナンスに縛られ過ぎて、企業活動が萎縮してはいけません。これまで仕事で得た知見や経験をフル活用し、大いに力を振るっていただきたい。その際に善管注意義務を果たすことだけはお忘れなく。これは人並み・世間並みの感覚を保ち、常識的な振る舞いと判断を常にしてくださいという意味です。
具体的に気を付けるべきは以下の3点です。『定められた手続きを守り仕事を遂行すること』『違法行為をしないこと』『監督義務をきちんと果たすこと』。基準としては、誰に話しても恥ずかしくないよう業務をしていれば問題はありません。法律とはそれほど難しくできているわけではなく、概ね常識に照らして判断がなされるものなのです」
そして、葉玉氏は日本の企業人に向けた注意事項を一つ付言する。
「思わぬ落とし穴となるのは、『会社のために』やる違法行為。つい『これは個人の利益ではない、会社のためにやっているんだ』と言いながら突き進んでしまうのです。そこから倒産や逮捕など大きな問題に発展する例が見られますから、注意が必要です」
新任取締役・執行役員セミナーについて
新任取締役・執行役員などの経営層や次世代経営幹部候補者の方を対象に、リーダーとしての資質・能力を体得し、自らの意識を改革して、実践に役立てていただくことを目的とした特別なプログラムです。取締役・役員に必要な知識とスキルを実績豊富な一流の講師陣が指導します。テーマごとに複数日程の開催をしており、学習が必要なテーマを選び、日にちを組み合わせて受講可能。また、セミナーは東京・大阪会場に加え、オンライン(ライブ配信)でも開催します。申し込み、詳細は以下の特設サイトから。
◎文/山内宏泰 写真/太田隆生
◎「SMBCマネジメント+」2025年6月号掲載記事
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