多田智子の働き方改革関連コラム 10月は年次有給休暇取得促進期間です

多田国際コンサルティンググループは、忙しいビジネスパーソンが知りたい【労務管理に関する旬な情報】を厳選してお送りします。
今回は、年次有給休暇についてお知らせします。


 厚生労働省では企業の「働きやすさ」に関する指標の一つとして年次有給休暇の取得率を挙げており、毎年10月に「年次有給休暇取得促進期間」を設け、様々な形でメッセージを発信しています。

 年次有給休暇は、従業員の心身の疲労を回復させ、過重労働による病気や怪我を未然に防ぐことが大きな目的ですが、近年の調査では、大学生が就職先選びにおいて重視するポイントで「個人生活と仕事の両立」すなわち、「ワーク・ライフ・バランスの実現」が上位を占め、また、中途採用市場においても、転職の決定理由に「休日や休暇の取りやすさ」があげられていることからも、年次有給休暇を取得しやすい職場づくりは、企業にとって優秀人材の獲得やリテンションにも効果があると考えられます。

 また、2023年3月31日以降に終了する事業年度から大手企業を中心に有価証券報告書への人的資本開示が義務化されたことに伴い、自社の年次有給休暇取得率をホームページ等で公表する企業も増えており、求職者や投資家等にとって「人的資本経営」を推進する企業かどうかを推し量る指標ともなり得ることから、年次有給休暇の取得しやすい環境整備は喫緊の課題となっています。



年次有給休暇の取得率向上に向けて

 はじめに、年次有給休暇は①雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、且つ②その6ヶ月間の全労働日の8割以上を出勤した労働者に与えなければならない、と労働基準法に定められています。対象となるのは正社員のみならず、パートタイム労働者やアルバイト等であっても、所定労働日数に応じて比例付与された日数を与えなければなりません。


 次に、2019年4月の法改正により、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対し、年次有給休暇を付与した日から1年以内に「5日間」を確実に取得させることが企業の義務となりました。本来、年次有給休暇は従業員本人が請求して取得するものですが、仮に本人が取得を希望しない場合であっても、会社が本人の意見を聴取した上で、時季を指定して5日間取得させなければ法違反を問われることとなります。



 一方、今年8月2日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更では、令和10年までに年次有給休暇の取得率を70%に引き上げることが政府の目標として掲げられており、企業の義務となっている5日間の取得を達成するだけでは年次有給休暇の取得率は上がりません。そのための取組みとして、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では企業が自社の働き方や休み方を見直し、改善するのに役立つ情報が提供されています。

 多くの職場では、「周囲に迷惑がかかるから」というためらいが年次有給休暇取得の妨げの一因といわれていますが、経営トップが年次有給休暇取得を促進するメッセージを発信したり、上司が積極的に取得するほか、会社の施策として「年次有給休暇の計画的付与制度」を導入することで、取得する従業員の心理的ハードルを下げる、といった効果が見込める可能性があります。

 また、同サイトの企業向け自己診断ツールを活用して自社の現状・課題を可視化することにより、改善に向けた施策を検討することに役立てられます。


詳細については、以下の厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」にてご確認ください。


※関連リンク

〇 厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト


多田国際コンサルティング株式会社・働き方サイト
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