Netpress 第2412号 知っていると差がつく! 資料作成時に意識したい 「フォント」の基本

Point
1.フォントには膨大な種類があるため、どれを使うべきかの判断が難しく、多くの人は標準設定のままです。
2.目的にあったフォントを選び、その設定に工夫を加えることで、資料の理解を助けたり、説得力を持たせたりするなど、さまざまな効果を演出することができます。


日本つかみ協会 代表
プレゼンテーション・プロデューサー
森田 翔



1.フォントの種類と特徴

(1)和文(日本語)フォント

和文フォントは、「明朝体」と「ゴシック体」に大別できます(上図のA)。

明朝体は、横線に対して縦線が太く、横線の右端や曲がり角の右肩に三角形の山(ウロコ)がある書体です。ゴシック体は、横線と縦線の太さがほぼ同じで、ウロコが(ほとんど)ない書体です。


選択基準は、「可読性(読みやすさ)」と「可視性(見やすさ)」です。

明朝体は可読性に優れ、本文などに適しています。お薦めの明朝体は「游明朝」です。文字の大きさがそろった漢字と、正統派な仮名の組み合わせが特徴で、長文のビジネス文書に最適です。「ヒラギノ明朝」はクセがないため汎用性が高く、定番のフォントです。文字どうしの間隔が等しく、文字が綺麗に並びます。

ゴシック体は可視性に優れます。最初に注目を集めたいタイトルはゴシック体の出番です。お薦めのゴシック体は「メイリオ」です。スクリーン上で美しく表示でき、横組みや英文との組み合わせに適していることをコンセプトに開発されました。レギュラーとボールド(太字)のコントラストが大きい点も魅力であり、迷ったらメイリオで間違いないでしょう。


また、明朝体とゴシック体を組み合わせる場合、「游明朝」なら「游ゴシック」、「ヒラギノ明朝」なら「ヒラギノ角ゴシック」を使用するのが無難です。ごく普通なだけに使い勝手のよいフォントです。


(2)英文フォント

英文フォントは、「セリフ体」と「サンセリフ体」の2つに大別できます(上図のB)。

「セリフ」は文字の線の端にある爪状の飾りを指し、セリフがあるのがセリフ体、ないのがサンセリフ体です。この飾りによって視線が誘導されるため、セリフ体は可読性が高く、より単純であるサンセリフ体は可視性が高いと言えます。

セリフ体の代表格が「Garamond」です。堂々としたたたずまいから、企業のロゴマークとして人気です。

サンセリフ体では、「Segoe UI」が最もお薦めです。特筆すべき点は、和文と英文を併用してもフォントのサイズ差が小さく、メイリオとの相性が抜群なことです。和文をメイリオ、英文をSegoe UIに設定してスライドマスター(スライドを一括編集できるPowerPointの機能)に登録しておくと便利です。


また、デザイナーの支持を集めるサンセリフ体に「Helvetica」があります。シンプルながら説得力に富む力強さが持ち味で、出版・広告業界では必要不可欠なフォントとされています。なお、Helveticaを使用できない場合は、「Arial」が代替になります。


(3)その他の注意事項

ボールドは、本文として紙面いっぱいに広げると、可読性が損なわれるため、多用は禁物です。

イタリック、ポップ体やデザイン書体など個性的なフォントも、長文での可読性が非常に低く、読者を混乱させます。アイキャッチ程度にとどめましょう。

なお、和文フォントの多くはアルファベットが等幅となり、見た目が崩れます。原則、英文は英文フォントを使用します。

英数字は、「すべて半角」や「原則半角(1文字の場合のみ全角)」といった表記のルールを決めて、それを厳守しましょう。無秩序に全角と半角が混ざっていると、不ぞろいが目立ち、資料の完成度が低下します。




2.目的別のフォントの使い方

(1)PowerPoint(スライド、ポスター、チラシなど)

一般に、スライドなどは要点を端的に説明します。短めの文章が想定され、可読性よりも可視性が求められるため、ゴシック体のみで問題ありません。


① サイズ

目安としては、タイトル:24〜36pt、本文:12〜20pt、キャプション(画像や図版の説明文):8〜10ptです。

通常、手元に配布する資料に比べ、プロジェクターで投影する資料では、サイズを大きくします。

文字サイズは、「ジャンプ率」を高めて強弱をつけてください。ジャンプ率とは、本文の文字サイズに対するタイトルや見出しの文字サイズの比率のことです。ジャンプ率が低いと落ち着いた印象に、高いと躍動感のある印象になります。ジャンプ率は、1.5〜2.0倍が目安です。


② 文字組み

行間や字間、サイズを調整して、文字が読みやすくなるように整えます。行間が詰まり過ぎていると読みにくいため、文字サイズに対して1.2〜1.5倍程度の余白を取りましょう。


③ その他注意点

スライドなどでは、1行の文字数が多すぎるのは好ましくありません。次の行を見失いやすくなるからです。スクリーンに映っている場合には、文章を目で追うだけで疲れてしまいます。特にキャプションなどは簡潔にしましょう。


(2)Word・Excel(報告書、契約書、請求書など)

見出しや強調したい部分、数値にはゴシック体を、本文には線が細くスッキリした明朝体を使うと見栄えがよくなります。「MS Pゴシック」は、すべての文字が等幅の「MS ゴシック」に対し、文字幅が調整された(Pはプロポーショナルの意)ものです。通常のテキストでは「MS Pゴシック」を推奨しますが、文字による表組みやスペースを整えたい場合など、文字幅を均一にしたいときは「MS ゴシック」を選択しましょう。



◎協力/日本実業出版社

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