Netpress 第2409号 応募者も企業も注目! 採用選考における生成AIの最新活用事情

Point
1.採用選考の場面において、応募者側と企業側との双方で、生成AIの活用が進んでいます。
2.ここでは、「ChatGPT」を使用する前提で、応募者と企業は生成AIをどのように活用しているのか、またどのような活用法が有効であるかについて解説します。


社会保険労務士法人サフィール
特定社会保険労務士
福留 文治


1.応募者側の生成AIの活用

応募者の生成AIの活用で多く見受けられるのは、履歴書、職務経歴書、エントリーシート(以下、「ES」といいます)等の選考書類の作成においてです。なぜなら、生成AIにプロンプト(指示文)を入力しさえすれば、指定した条件をある程度満たした文章が一瞬で出力されるからです。


たとえば、志望動機を考える際、応募企業のホームページのリンクを入力し、志望動機に含めたい単語や字数制限の指定等を加えたプロンプトを与えると、次のような文章が数秒で作成されます。




また、このプロンプトに基づいて「さらに追加で○個の案を出してください」と指示すれば、そのとおりに案を出してくれます(内容が重複している場合もあります)。


ただし、字数(今回は200文字)については、厳密には守られない可能性があります。また、文章自体に独創性や面白みがあるわけではなく、あくまでも一般論といえる内容です。


それでも、プロンプトを適宜調整して必要な要素を盛り込みながら文章をブラッシュアップし、それをたたき台にして修正を加えれば、志望動機としては十分に通用するものになるでしょう。


同様に、職務経歴書やESについても、応募者は一からすべてを考えるよりも圧倒的に短い時間で、十分に活用可能な文章を作成することができるのです。複数の企業に応募する場合も、企業に応じて文中の単語や表現を変更すれば、各企業向けの文章に調整することができます。


このように、生成AIを活用することで応募者は求められる文章を手軽に作成し、書類作成に掛かる時間を大幅に短縮することができるのです。

2.応募者側の生成AI利用に対する対応

企業側の視点から、応募者側の生成AI活用に対する対応を説明します。


企業は、履歴書に加えて新卒採用ならばES、中途採用ならば職務経歴書の提出を応募者に求めます。そして、それらの書類をもとに、次の選考に進める応募者を見極めることになります。


その際、「応募者の生成AIによる選考書類の作成を禁止したい」という採用担当者の考えは理解できますが、現実的には応募者側の生成AI活用を見越して採否を判断すべきです。


学生が就職活動で生成AIを活用することについては、多くの採用担当者が肯定的に受け止めています。つまり、多くは「応募者には生成AIをツールとして活用してもらって構わない」と考えているのです。


筆者自身、生成AIを活用して日常業務を効率的に処理し、余った時間で自分(人間)にしかできない業務に注力しています。今後、企業において生成AI活用の重要性はますます増していくでしょう。個人的には、「生成AIで仕事がなくなるのではなく、生成AIを味方にしなかった人の仕事がなくなる」と考えています。


選考過程で、応募者が生成AIを活用して応募することについても、「AIを味方につけた人材」と評価してもよいのではないでしょうか。

3.企業側の採用活動での生成AIの活用

筆者が企業から多く受ける相談に、「選考書類と面接の内容を評価して雇用したにもかかわらず、まったく仕事ができない」というものがあります。


話を聞くと、「履歴書の内容」「第一印象」「見た目」「資格」で採用を決定している場合がほとんどでした。


人手不足で応募者自体も少ない場合、選考の基準を厳しくして採用者がゼロ、という状況が続くのを避けたい気持ちもわかります。しかし、採用後のミスマッチを避けるためにも、やはり選考は厳密に行うべきです。


そこで、企業側も採用活動で生成AIを上手に活用してみてはいかがでしょうか。採用活動における生成AIの活用例としては、次のようなものがあります。



募集要項の作成

応募者への連絡のテンプレート作成

応募書類の評価基準の作成と評価

自社で活躍している人材の特徴を踏まえた面接時の質問作成

面接の議事録の作成・要約(音声をテキスト化したデータが必要)


こういった選考フロー内の作業に関して、「選考用のプロンプトのひな形を用意する」「出力された文章に対して質問を追加し、内容をブラッシュアップする」ことで、採用活動を効率的に進めることができるでしょう。

4.中小企業の採用活動で求められること

中小企業の場合、採用募集をかけても「どうにか1人応募があった」というケースが少なくありません。そのため、条件を絞りすぎて面接できる人がいなくなっては本末転倒です。


私は顧問先に対して、応募者の選考書類作成に関しては生成AIの活用を認めつつ、「AIから出力された文章をそのまま提出するのは不可」という条件をつけるようにお伝えしています。


そのうえで、応募者が生成AIを使えないオンラインや対面での面接、実技試験や体験入社等での評価をより重視すると、採用後にミスマッチが起こる可能性を下げることができます。


そういった意味では、生成AIを活用することとあわせて、今後ますます応募者の人間性を見抜く力が採用担当者には求められることになるでしょう。



◎協力/日本実業出版社

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