マネプラ・オピニオン ポストコロナ、経済再生の主役は中堅中小企業

本コラム「マネプラ・オピニオン」は、6名の識者の方々に輪番制でご担当頂きます。それぞれがご自身の視点で経営者の方々へのメッセージをまとめた連載コラムです。



グローバル化が進む中、自動車や電機などのグローバル大企業の生産活動はどうしても世界へシフトしていく。また、デジタル型新産業は高度な知識と設備で運営されるので多くの中間層雇用を生まず、欧米では富の偏在による分断を生みつつある。


ポストコロナ期に向け、デジタル化はさらに加速しグローバル化も止まらない中で、わが国の持続的な再成長をどう展望するか?


私がL(ローカル)型産業と呼んでいる物流、交通、建設、飲食・宿泊、小売、生活サービス、娯楽、医療・介護、金属加工、食品、農林水産業などの地域密着型産業は、すでにわが国のGDPの7割、雇用の8割を占めている。


今さら大規模工場が国内にどんどんできて大量の雇用を生むことはなく、またデジタル時代の新産業が多くの中間層雇用を生まないとすれば、こうしたL型産業の生産性を高めることが経済再生の王道にならざるを得ない。


わが国におけるこのセクターの生産性は、先進国の中でも際立って低い。しかし、これは伸びしろの大きさを示している。


私たちは東日本を中心に地方公共交通機関を経営し5,000人以上の雇用を抱えるなど、長年、地域の中堅中小企業の再生や経営改革に取り組んできたが、その実績、実感として“改善しろ”は大きく、然るべき経営人材がやるべきことをやるだけで生産性は2割、3割と上がっていく。


生産性は付加価値を投入資源(労働時間や投入資本)で割ったもの。GDPは付加価値の総計なので、7割のセクターの生産性が2割、3割上がればわが国の経済を大きく押し上げる。


また、世界中から続々登場するクラウド時代のデジタル新技術は、中堅中小企業でも利用可能な安価で使い勝手の良いものになりつつある。


L型産業群の中心は中堅中小企業であり、規模の経済性があまり効かず、域内の商圏密度が重要なビジネスが多いので、この傾向は今後も変わらない。経営者の皆さん、一緒にこのチャンスをつかんで行きましょう!


◎「SMBCマネジメント+」2021年7月号掲載記事

プロフィール

株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役社長 冨山和彦

株式会社ボストン コンサルティング グループ、株式会社コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年、株式会社産業再生機構設立に参画しCOOに就任。解散後、07年に株式会社経営共創基盤(IGPI)を設立し代表取締役CEOに就任。20 年10月よりIGPIグループ会長。20 年に株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX)設立、代表取締役社長に就任。パナソニック株式会社 社外取締役、経済同友会政策審議会 委員長、日本取締役協会会長、政府関連委員多数。

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