Netpress 第2377号 地方創生プロジェクトへの応援 最大9割を法人税等から控除!「企業版ふるさと納税」

1.企業版ふるさと納税では、企業が寄附をしやすいように、損金算入による軽減効果に税額控除による軽減効果が上乗せされます(令和7年3月31日までの特例措置)。
2.寄附額の下限は10万円と低めの設定で、寄附企業への返礼品や経済的な見返りは禁止となっています。
御堂筋税理士法人
税理士 田中 学
1.企業版ふるさと納税とは
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)とは、国が認定した地域再生計画に位置付けられる地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組みです。
具体的には、寄附額の損金算入による軽減効果(寄附額の約3割)と合わせて、税額控除(寄附額の最大6割)により、最大で寄附額の約9割が軽減され、実質的な企業の負担が約1割までに圧縮できる制度です。平成28年度に創設され、令和6年度までの特例措置になります。
内閣府地方創生推進事務局によると、令和4年度の寄附実績は次のとおりです。
金 額 | 約341.1億円 |
件 数 | 8,390件 |
令和3年度の寄附実績と比べると、金額は約1.5倍、件数は約1.7倍へと大きく伸びています。
現行の制度は、令和6年度までの適用となりますが、今後も多くの企業がふるさと納税制度を活用することが予想されます。
2.企業版ふるさと納税の5つのメリット
(1)法人税などの負担軽減が見込める
寄附額の損金算入による軽減効果(寄附額の約3割)と合わせて、税額控除(寄附額の最大6割)により、最大で寄附額の約9割が軽減され、実質的な企業の負担が約1割までに圧縮できて企業の節税対策につながります。
(2)新規事業を展開できる
寄附先の地方公共団体や地域住民と協働し、地域の課題解決に取り組めます。プロジェクトに取り組みながら、地域団体や住民から生の声を聴けるため、自社事業に関連する新しいニーズや市場の発見につながるでしょう。
(3)企業のイメージアップが期待できる
寄附先の地方公共団体や地域住民からは、社会貢献や地方創生の活動へ積極的に参画する企業として評価され、地方創生に貢献した優秀な事例が広く社会に発信されることで、他の企業のモデルケースとなるなど、自社のブランド力や信頼性が高まるでしょう。
(4)地方公共団体と関係性を築ける
地方公共団体と信頼関係やパートナーシップを築くことにつながります。地方公共団体との交流で得た情報をもとに、適切なアイデア・施策を生み出して実行すれば、環境保護や地域社会の改善などに寄与する企業として活動できます。
(5)人材育成の機会を得られる
企業版ふるさと納税には、人材派遣型が存在します。人材派遣型の企業版ふるさと納税を利用すれば、企業は自社の人材を地方創生の現場に派遣できます。協働や異業種交流を通じて、社員のスキルアップや視野拡大、モチべーション向上などの効果が期待できるでしょう。
3.企業版ふるさと納税の3つのデメリット
(1)企業からのキャッシュアウトが伴う
企業版ふるさと納税を利用するには、寄附金を企業のキャッシュから支出する必要があるため、企業の資金繰りや予算管理に影響を与える可能性があります。
(2)返礼品の受け取りや経済的な利益の享受ができない
個人のふるさと納税とは異なり、寄附先から返礼品や経済的な利益を受け取ることができません。
(3)税額控除の対象に制限がある
企業版ふるさと納税で税額控除を受けるためには、国が認定した地方公共団体の地域創生プロジェクトに対して寄附する必要があります。地方創生に資する事業に対して優遇することで、地方公共団体や地域住民の自助活動を促すためです。
4.法人税控除の条件と手続方法等
(1)法人税控除の条件
・ | 寄附先は、国が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」であること |
・ | 1回あたりの寄附金は10万円以上であること |
・ | 寄附の代償として経済的な利益を受けないこと |
・ | 本社が所在する地方公共団体は対象外 |
・ | 地方交付税の不交付団体である都道府県は対象外 |
・ | 地方交付税の不交付団体であって、その全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域に存する市区町村は対象外 |
(2)手続方法
① | 寄附先を選択する |
② | 各自治体の窓口に問い合わせる |
③ | 必要書類を提出し、寄附を行う |
④ | 法人税および地方税申告時に別表を添付する |
(3)能登半島地震の被災者支援や今後の復旧・復興のための活用
令和6年1月に発生した能登半島地震により、石川県能登地方を中心に甚大な被害が発生しました。
被災者支援や今後の復旧・復興には、多くの支援が必要とされるため、石川県、富山県をはじめ両県内の各市町村では、すでに企業版ふるさと納税の受け入れを表明している自治体が多数あります。寄附金は、被災者支援や復旧・復興に活用されますので、企業の皆様も企業版ふるさと納税を活用して北陸の支援をご検討ください。
なお、企業版ふるさと納税の詳細や手続等は、下記の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」でご確認ください。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html
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