Netpress 第2060号 ご存知ですか? 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得

Point
1.育児・介護休業法施行規則等の改正により、育児や介護を行う労働者は、2021年1月から子の看護休暇と介護休暇を時間単位で取得できるようになりました。
2.この改正内容と、制度の運用にあたって押さえておきたい実務上の留意点などについて解説します。


社会保険労務士 佐佐木 由美子

1.子の看護休暇・介護休暇の概要

(1) 子の看護休暇とは

子の看護休暇とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、事業主に申し出ることにより、1年度に5日(当該子が2人以上の場合は10日)を限度として、病気やケガをした子の世話や疾病の予防を図るために必要な世話をするときに取得できる休暇制度をいいます。

(2) 介護休暇とは

介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者が、事業主に申し出ることにより、1年度に5日(当該対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として、必要な介護のために取得できる休暇制度です。

要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。

2.今回の改正のポイント

(1) 時間単位で取得できる

従来、子の看護休暇・介護休暇のいずれも「1日単位または半日単位」が取得単位でしたが、育児・介護休業法施行規則等の改正により、2021年1月から「1日単位または時間単位」での取得が可能になりました。

法令で求められているのは、いわゆる「中抜け」(就業時間の途中に時間単位の休暇を取得し、再び仕事に戻ること)なしの時間単位休暇で、始業時刻から連続または終業時刻まで連続した時間です。この点、法を上回る「中抜け」ありの制度への配慮もぜひ検討したいところです。

「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいい、労働者からの申出に応じ、労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要があります。労働者が1時間の介護休暇の取得を申し出て、実際には1時間に満たない時間を休んだ場合には、1時間の介護休暇を取得したものとして差し支えありません。

なお、時間単位での子の看護休暇・介護休暇の取得が可能な労働者については、半日単位での取得を可能とする必要はありません。

(2) 原則として全員が対象

改正前は、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者と、労使協定により半日単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、1日単位での取得となっていました。

改正後は、すべての労働者が時間単位で取得できるようになりました。ただし、「業務の性質や実施体制に照らし、1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結した場合は、時間単位の休暇取得の申出を拒むことは可能ですが、このようなケースでも、半日単位での休暇取得を認めるような配慮が求められます。

なお、労使協定によって、「勤続6か月未満の労働者」「週の所定労働日数が2日以下の労働者」を子の看護休暇・介護休暇の対象外にすることが可能な点は、改正後においても変わりません。

3.実務上の留意点

半日単位から時間単位への取得となると、運用面で疑問が生じることが考えられますので、わかりにくい点について、実務上の留意点を取り上げて解説します。

(1) 所定労働時間に1時間未満の端数がある場合

子の看護休暇・介護休暇の時間単位化について、所定労働時間に1時間未満の端数がある場合の取り扱いに注意しなければなりません。1日の所定労働時間に1時間未満の端数がある場合には、端数を時間単位に切り上げる必要があります。

1日の所定労働時間が7時間30分のケースで考えてみましょう。時間単位で子の看護休暇・ 介護休暇を取得する場合は、30分の端数を切り上げて、8時間分の休暇で1日分となります。

年5日の介護休暇が取得可能な労働者がいる場合、下図のように「①1日単位で休む場合」は残り4日となりますが、「②6時間休む場合」は1時間30分勤務することになり、残りは4日と2時間となります。




(2) 日によって所定労働時間数が異なる場合

パートタイマーなど日によって所定労働時間数が異なる労働者が子の看護休暇・介護休暇を取得する場合について、1日の時間数をどう考えるか悩ましいケースがあります。

基本的に、1日の「平均所定労働時間数」を1日の時間数として扱いますが、当該休暇を日単位として取り扱うか、時間単位として取り扱うかにより、労働者に有利になる場合もあれば不利になる場合もあります。

たとえば、介護休暇1日の時間数(平均所定労働時間数)が7時間の労働者が、所定労働時間数が8時間の日に8時間分の休暇を取得する場合、日単位として取り扱うと介護休暇「1日分」に相当しますが、時間単位として取り扱うと介護休暇「1日と1時間分」に相当し、時間単位で取得すると労働者に不利になります。

こうした場合の取り扱いをあらかじめ統一的に定めるため、時間単位で子の看護休暇・介護休暇を取得する場合の「時間」は、休暇を取得しようとする日の所定労働時間数未満の時間とされています。

休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数の子の看護休暇・介護休暇を取得する場合には、日単位での取得として取り扱うことになります。



PDF形式でもダウンロードできます

SMBCコンサルティングでは、法律・税務会計・労務人事制度など、経営に関するお役立ち情報「Netpress」を毎週発信しています。A4サイズ2ページ程にまとめているので、ちょっとした空き時間にお読みいただけます。

PDFはこちら

プロフィール

SMBCコンサルティング株式会社 ソリューション開発部 経営相談グループ

SMBC経営懇話会の会員企業様向けに、「無料経営相談」をご提供しています。

法務・税務・経営などの様々な問題に、弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・コンサルタントや当社相談員がアドバイス。来社相談、電話相談のほか、オンラインによる相談にも対応致します。会員企業の社員の方であれば“どなたでも、何回でも”無料でご利用頂けます。

https://www.smbc-consulting.co.jp/company/mcs/basic/sodan/


受付中のセミナー・資料ダウンロード・アンケート