Netpress 第2176号 多様な人材を惹きつける 新しい働き方に即した組織デザイン、人事処遇とは

Point
1.雇用の多様化にともない、長期勤続の正社員を前提とした処遇から、昇給・昇格を四半期ごとに変更したり、個人別に処遇を随時見直したりするなど、柔軟な処遇に移行していくことが求められます。
2.コロナ禍で一気に進んだリモートワークですが、多様な人材を活用することとリモートワークは親和性が高く、リモートワークの成否が人材獲得競争のカギを握るといっても過言ではありません。
3.リモートワークとジョブ型雇用を組み合わせることで、これまでとは大きく異なる組織デザインが可能となります。これからの時代、イノベーティブな組織をデザインしていく必要があります。


株式会社グローディア
代表取締役 各務 晶久


1.労働人口の減少により迫られる雇用の多様化

日本の労働人口は、急速な勢いで減少に転じています。


18歳人口は、近年110万人台で推移しています。一方、65歳に到達する人口は、今後の数年間155万人前後で推移していくと予想されています(文部科学省「学校基本調査」)。


すなわち、労働市場から退出する人口を、新卒者ではとうてい賄えない状況に陥っているのです。


中堅・中小企業においては、人材の確保が一層難しくなるため、不足する労働力をさまざまな形で補っていかなければなりません。これまで労働力として活用してこなかった専業主婦、フリーター、外国人といった多様な人材を活用せざるを得ないのです。


大企業では、「ダイバーシティ推進」が声高に叫ばれていますが、中堅・中小企業こそ、多様な人材活用という点では、ダイバーシティを推進せざるを得ない切羽詰まった状況にあるといえるでしょう。

2.さまざまな雇用形態の従業員の処遇をどう考えるか

正社員は長期勤続を前提としており、年一回、決まった時期に昇給や昇格を行うとともに、その基礎資料となる人事評価も年単位のものを用います。


また、公式な人事評価には明示されていなくても、企業へのロイヤリティが高い社員を評価する傾向にあるのではないでしょうか。


有給休暇は取らない、残業は厭わない、家庭の事情があっても転勤や単身赴任に応じる、といった「私」より「公」を優先する姿勢を暗黙のうちに正社員に求めています。


しかし、当然のことながら、労働力が多様化すれば、これまで正社員に求めていた価値観をすべての人に押しつけることはできなくなります。


短期間や短時間だけ働きたい人、仕事よりもプライベートを優先したい人など、同じ職場で働く人々の価値観が多様化するからです。


したがって、これまで正社員を前提にしていた年一回の昇給・昇格を四半期ごとに変更したり、個人別に処遇を随時見直したりして、より細かく刺激を与える対応が必要です。


また、昨今話題の「ジョブ型雇用」をベースとした「短時間正社員」などの柔軟な発想で、雇用形態を多様化しなければなりません。

3.多様な働き方を認める職務デザイン

「ジョブ型雇用」は、コロナ禍におけるリモートワークの進展にともなって注目が集まった人事分野のホットワードの一つです。


これまで、多くの日本企業では、基本的に終身雇用の「メンバーシップ型」と呼ばれる職務内容を限定しない雇用形態を採用してきました。


職種をまたがる人事異動はもちろんのこと、部署内でも上司がメンバーの負荷や能力を勘案しながら仕事を随時割り振るなど、職務範囲の境界を曖昧にしてきました。


しかし、リモートワークでは、目の前にいる部下にその都度仕事を振る、といったマネジメントができません。明確に個々人の業務範囲を決め、責任をもたせたうえで、個々人の裁量で仕事を進めさせるほうが効率的です。そういう背景から、ジョブ型が注目されています。


ジョブ型を導入するには、欧米でみられる「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」が必要で、どのような職務を任せるのかを採用時に明示します。


また、職務内容が変わらなければ、処遇は基本的に据え置かれます。同じ仕事内容なら、誰がやっても同じ処遇となるのがジョブ型の基本です。


ジョブ型を導入すれば、人事異動が難しくなる点にも注意が必要です。異動のたびに給与が上下するなら、人事異動は命じにくくなるからです。


人事異動がなく、同じ部署で同じ仕事に就き続けた場合、ジョブ型では年功要素が加味されないため、処遇は据え置かれます。


そうしたことから、労使双方で人事異動や属人給、年功に対する考え方を根本から変えない限り、メンバーシップ型で雇用してきた正社員をジョブ型に切り替えるハードルは高いでしょう。


一方で、多様な人材を新しく雇用する場合には、ジョブ型の適用はそれほど難しくありません。


しかし、これまでパートやアルバイトに与えていた職務よりも高度な職務において、職務範囲やミッションを明確化して仕事を任せていくには、マネジメントサイドが仕事をきちんとパッケージ化する能力を身に付けなければなりません。それが、ジョブ型を適用する前提となります。

4.新しい働き方を推進する組織デザイン

コロナ禍で一気に進んだ新しい働き方がリモートワークです。


多様な人材を活用することとリモートワークは親和性が高く、リモートワークの成否が人材獲得競争のカギを握るといっても過言ではありません。


リモートワークとジョブ型雇用を組み合わせることで、これまでとは大きく異なる組織デザインが可能となります。職務範囲を明確にすれば、一人の管理職が非常に多くの部下をマネジメントすることができます。


しかし、そのためには、社員の取り組み姿勢を逐次把握するようなマネジメントから脱却し、個々人の働き方の自由度を高め、業務の完遂状況をフォローするマネジメントに転換する必要があります。


同時に、兼業や副業をどんどん認める、個人事業主として契約するなど、多様な人材を惹きつける組織デザインも必要となります。


これからの時代、イノベーティブな組織をデザインする重要なキーワードの一つは「自由度」といえるでしょう。



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