コラム「絵心のススメ」第3回 何が良いかなんて、最後まで分からない

仕事を通じて出会う人たちのイラストを描くようになった、とある似顔絵描きの独り言。



今回は似顔絵講座―――(あくまで個人的流儀です)。

 

えー、まず似顔絵をどこから描くかというと、目から描く。人物によっては、眉毛から。きらきらと輝く瞳や、人柄が滲み出ている細~い目。ちょっとつり上がった眉毛や、やったるでーっと前向き意欲全開の太い眉毛。いずれにしても、その人の強い意志や特徴が表れている気がして、まずはここから描き始める。

 

次にお鼻をポチポチッと、またはでーんと描いて、続いて、口へ。ここ、目の表情とのバランスが上手く取れるかが大切で、表情を決定づける勝負どころだ。口角が上がった素敵なスマイルや、戦国武将のように、むんっとした「へ」の字だったり。輪郭はそのあと。最後に、髪の毛はダイナミックに、遊び心も入れて!

 

全体像を捉えることも大切だけど、この人のここをこう描きたい、という気持ちに正直に、思ったままにペンを動かしてみる。思いきって引いた線が、あちゃーっ描かなきゃ良かった……と思うこともあるけれど、次の瞬間には逆に、効果的ですごくいいんじゃな~い、となることもしばしば。

 

瞬間、瞬間がドラマで、何が良いかなんて最後までわからない。まるで人生(ちょっと大袈裟?)。むしろ最後まで描いたってわからない。どうも納得いかん、もしょっちゅうだから。

 

ただ、とても大切なポイントがある。それは、描きすぎないこと、手を加え過ぎないこと。これがどうにもこうにも難しいが大切なところ。もっと良くしたいと、どうしても描き足したくなるが、その気持ちを抑え、一気に描いた筆感のままを大切にする。これが、心掛けているけれど、なかなか出来ていないところでもある。

 

とにかく後先構わずまず取りかかってみて、あとはいじり過ぎない。世の中いろいろなモノや情報が溢れ、いろいろな課題に、いろいろな人たちと向き合っていくビジネスの世界。こんな仕事のスタイルも中にはあり、だと思う―――(あくまで個人的意見です)。

 

さて、今回の似顔絵は、薮中三十二さん。当社が主催するSMBC経営懇親会の毎月の人気イベント、「オンライン定例講演会」でご講演頂いた。外交に通じたキャリアも華々しいが、まずもってダンディーだなぁと思う。ちなみに鼻に施した縦の線、これがまさに、「あちゃーっ描いちゃったよー、いやっ? むしろいいんじゃない?」の例。今日はここまで。



プロフィール

SMBCコンサルティング株式会社 常務執行役員 遠藤宏之

1989年住友銀行(現・三井住友銀行)入行、法人部門やリテール部門を経て現職。40歳ごろから行内で似顔絵を描く機会が増え、当サイトでも制作した似顔絵を所々で提供。

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