Netpress 第2450号 重要ポイントは? 令和7年度の税制改正大綱 その概要をチェックする

Point
1.所得税の基礎控除が引き上げられ、給与所得控除の最低額引き上げで扶養親族の所得制限が緩和されます。
2.大学生等の就業調整に配慮して、特定親族特別控除が新設されます。
3.中小法人に対する法人税軽減税率の延長・見直しと、防衛特別法人税の創設があります。


しんわ税理士法人
代表社員・税理士
須山 雅之

1.所得税等に関する改正について

(1)基礎控除の引き上げ

 物価上昇局面における税負担の調整の観点から、令和7年分以降の個人の所得税の基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられます(合計所得金額が2,350万円以下の個人が対象)。


(2)給与所得控除の最低額の引き上げ

 同様の観点から、給与所得控除の最低保障額が令和7年分以降、現行の55万円から65万円に引き上げられます。


 なお、上記(1)と(2)の改正における給与所得の源泉徴収税額表、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の変更は令和8年分以降のため、令和7年1月からの給与計算には影響ありません。


(3)扶養控除等の所得の見直し

 上記基礎控除の引き上げに伴い、配偶者控除、扶養控除等の合計所得金額要件が令和7年分以降48万円から58万円に引き上げられます。給与収入のみの同一生計親族等については、123万円以下であれば対象となります。


(4)特定親族特別控除の新設

 大学生等のアルバイト就業対応策として、令和7年分以降の年齢19歳以上23歳未満の同一生計親族について以下の所得控除が新設されます。


親族の合計所得金額控除額給与収入の目安
58万円超85万円以下63万円123万円超150万円以下
85万円超90万円以下61万円150万円超155万円以下
90万円超95万円以下51万円155万円超160万円以下
95万円超100万円以下41万円160万円超165万円以下
100万円超105万円以下31万円165万円超170万円以下
105万円超110万円以下21万円170万円超175万円以下
110万円超115万円以下11万円175万円超180万円以下
115万円超120万円以下6万円180万円超185万円以下
120万円超123万円以下3万円185万円超188万円以下


(5)子育て支援税制

①生命保険料控除

 23歳未満の扶養親族を有する者については、令和8年分以降、新生命保険料控除(一般生命保険料)が以下の通り引き上げられます。


新生命保険料控除額
30,000円以下保険料の額
30,000円超60,000円以下保険料×1/2+15,000円
60,000円超120,000円以下保険料×1/4+30,000円
120,000円超60,000円


②住宅ローン減税

 本人か配偶者が40歳未満、または19歳未満の扶養親族を有する者については、令和7年分についても令和6年分と同様に優遇された借入限度額が適用されます。


 また、上記の者が既存住宅に一定の子育て対応改修工事をした場合に、一定の要件を満たすときは、工事費の10%相当額の税額控除を受けることができます。


(6)その他

 小規模企業共済等掛金控除のうち、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金の限度額が月額62,000円(個人事業主、国民年金基金は月額75,000円)に引き上げられます。


 退職手当等の退職所得控除における勤続期間の重複排除特例が、令和8年1月以降、受給年の前年以前9年内(現行4年内)に改正されます。

2.法人税に関する改正について

(1)中小法人に対する法人税軽減税率の延長と見直し

 中小法人(資本金1億円以下等)の所得年800万円以下の部分に適用される法人税率(15%)の軽減措置について、2年間延長されます。


 あわせて、所得が年10億円超の事業年度については軽減措置を17%(現行15%)とし、また通算法人が適用対象法人から除外されます。


(2)中小企業投資促進税制の延長

 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除を適用できる中小企業投資促進税制が令和9年3月31日まで2年間延長されます。


(3)防衛特別法人税の創設

 防衛力強化に係る財源確保を目的として、令和8年4月1日以降に開始する事業年度から以下の防衛特別法人税が創設されます。


(各課税事業年度の法人税額-500万円(基礎控除))×4%

3.相続税に関する改正について

 直系尊属(両親、祖父母等)から受ける結婚・子育て資金の一括贈与制度の適用期限が令和9年3月31日まで2年間延長されます。


(注)
本税制大綱は令和6年12月20日に自由民主党と公明党が発表したものであり、現在の与党は少数与党であるため、法案成立に当たり野党との協議、調整があると想定されますが、例年通りであれば3月末には成立する見込みです。



◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちら 
https://www.njg.co.jp/



本記事を執筆したしんわ税理士法人のウェブサイトはこちら

https://www.shinwa-tax.gr.jp/



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