Netpress 第2530号 用心と対策を! 「経理の詐欺被害」の実態と効果的な防衛策とは?
1.今日も詐欺グループはあの手この手で企業に狙いを定めており、その手口は年々巧妙化しています。
2.ここでは、詐欺被害の事例を交えて、経理部門が講じておくべき防衛策について解説します。
ビジネスメール詐欺をはじめ、企業を標的とする詐欺の手口は年々巧妙化しており、被害が後を絶ちません。最近では、経理担当者をSNSやLINEに誘導し、会社の預金残高を聞き出したうえで送金を指示する手口も見られます。
こうした状況のなかで、経理部門として、どのような防衛策を講じておけばよいのかを考えておきましょう。
1.実際に起きた経理詐欺の事例
| とある金曜日の午後3時前、週末の処理に追われていた経理担当者に、社長から「緊急」のメールが届く。 「極秘の投資案件を進めている。今日中に手付金として至急500万円を○○の口座に振り込んでほしい。詳細は後で話す。社内でも極秘のため、くれぐれも他の社員には相談しないように」 文の末尾に社長の署名もある。メールアドレスも社長名義である。経理担当者は当日振込みに間に合うように、急いで送金手続きを完了させた。 週明けに経理担当者が社長に報告すると、「そんな指示はしていない」と返答があり、慌てて銀行に連絡したが、送金した500万円はすでに引き出され、詐欺グループの手に渡っていた。 |
このような事件がいま企業の現場で実際に起きています。詐欺グループは社長や役員になりすまして、経理担当者に緊急の送金を指示してきますが、多くのケースでは、週末の午後などの忙しい時間帯が狙われます。経理担当者を焦らせることにより、落ち着いて考える時間を与えないようにするためです。
普段であれば、経理担当者も社内で承認された送金しかしませんが、社長直々の緊急命令であり、時間的なプレッシャーもかけられるなかで、特別処理として実行してしまうのです。
2.経理部門の脆弱ポイント
どのような会社でも、通常の支払処理であれば、しっかりとした承認フローが整っています。
経理部門では、各部門の上長の承認を受けて回ってきたものしか支払処理をしないのが基本です。振込み手続きにおいても、通常は振込み依頼の作成者と承認者とを分けています。さらに、必ずダブルチェックしたうえで、振込み処理が実行される仕組みになっています。
このような通常の承認フローを通る処理であれば、問題は起こりにくいでしょう。ところが、詐欺グループは、「緊急」「極秘」「相談禁止」といった言葉で圧力をかけて、通常のフローとは異なる例外処理へと誘導してきます。
例外時の対応については、はっきりと決まっていなかったり、曖昧になっていたりする会社も少なくありません。詐欺グループは、その綻びを突いてくるのです。
もちろん、「例外処理は一切認めない」というルールを徹底することも大事です。ただ、それ以上に詐欺グループが経理担当者の「緊急事態を救おうとする誠実さ」や、「社長命令を誠実に遂行しようとする従順さ」を巧みに利用してくる点に注意しなければなりません。焦っている心理状態であると、どうにかして処理を通そうとしてしまうものです。
3.詐欺被害を防ぐ3つの対策
それでは、詐欺被害を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。主な対策のポイントは次の3つです。
(1) 社長不在時の対応ルールの策定
1つ目は、社長が不在時の支払対応についてルールを決めておくことです。
社長のなりすまし詐欺は、「社長案件は最優先で対応する」という経理担当者特有の心理を突かれて発生します。
そのため、まずは「お金に関することで少しでも違和感があれば、即座に報告すること」を社長から経理担当者にハッキリと伝えておきます。そのうえで、社長不在で急を要する際には、必ずアナログな手続きを挟むようにしておきます。
デジタル技術が高度化するほど、対面での確認や、社長本人へのコールバック(折り返し電話)といったアナログな手段が確実な対策になります。メールの指示だけで動くのではなく、必ず経理担当者から、社長が普段使っている登録済みの携帯電話番号にかけ直して確認することを義務付けましょう。
そのためにも、経理担当者が躊躇せず社長に直接確認できるよう約束事にしておくことが大事です。「例外的な支払いの場合、外出中でも昼夜問わず、社長に直接電話で最終確認すること」を手順として明確に決めておきましょう。
(2) 支払承認フローのアップデート
2つ目は、支払承認フローの見直しです。例外対応時の承認プロセスを見直しましょう。
まず、どんなに緊急であっても、メールやLINEなどでの送金指示に関しては、即日中の支払実行を禁止にします。
ほとんどの詐欺被害は即日処理で発生しています。1日置いて冷静に考える時間をつくるだけでも、多くの詐欺被害を防ぐことができます。どうしても即日対応が必要な場合は、必ず前述したアナログな手順(電話や書面での確認)を組み合わせて、担当者以外のチェックが入るプロセスにしておきましょう。
また、どんなに緊急であっても、担当者1人では振込み手続きができないように(物理的にダブルチェックが入るように)システムで制御しておくことも重要です。
(3) 経理部内の運用セキュリティー強化
3つ目は、経理部内におけるセキュリティー面の強化です。
「極秘・秘密にしてほしい」「緊急・急いでいる」は、詐欺の常套句です。この言葉を見たら、詐欺を疑って用心するように、経理部内で共有しておきます。
そのうえで、例外処理や個別対応時の運用手順を経理部内でも決めておきます。まず、メールアドレスのスペルや、ドメインが偽装されていないか(例:正常[@kigyo.co.jp]→偽装[@kigyou.co.jp])を必ず確認することを徹底しましょう。
万が一、だまされてしまった場合に備えて、インターネットバンキングに制限をかけておくことも重要です。1日当たりや1件当たりの振込み限度額を設定し、経理担当者だけの権限では変更できないようにしておきます。事前登録していない振込み相手に対しては、即日振込みができないように制限しておくことも有効です。
また、日頃から経理部内の風通しをよくしておくことも、とても大事です。担当者同士や上司と担当者の間でのコミュニケーションを積極的にとっておくようにしましょう。緊急時にも相談しやすい環境があることで、怪しい依頼を1人で判断してしまうリスクを減らすことができます。
詐欺グループにつけ込まれないよう、例外時の運用を経理部内で共有しておき、もしものときに何でも話し合える雰囲気をつくっておくことが被害防止のために重要です。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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